Crypto Life

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Ethereumプロジェクト紹介 第2回 EncryptoTel

前回の「Ethereum プロジェクト紹介」では、Melonportを取り上げました。今回は、ICO情報サイトのcoinscheduleの情報を元に、直近のEtheruem ICOに関わるプロジェクトを見ていきたいと思います。まずは、EncryptoTelを取り上げます。

Coinschedule - The best cryptocurrency ICO list. Only selected ICO crowdfunding projects


掲載予定
EncryptoTel (今回)
MobileGO
Veritaseum
Back To Earth
Populous
FundRequest

(*) ここに掲載しているプロジェクトは、これから調査予定で、現時点では詳細を調べていません。ここに掲載する情報は投資をオススメするものではなく、ただの調査リストとお考えください。


前回の記事
cryptocoin.hatenablog.com

EncryptoTel

公式サイト
Encrypto Telecom
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Whitepaper
http://ico.encryptotel.com/assets/pdf/EncryptoTel_WP_v1.pdf


このプロジェクトでは、SkypeやLine通話のようなWeb通話を暗号化することで、個人間、企業間の通話を盗聴から防ごうというプロジェクトです。公式サイトでは個人間の通話に関しても情報が掲載されていますが、メインとなるターゲットは企業で使用されているPBX(後ほど記載)を、EncryptoTelでリプレースすることのようです。


具体的な使用方法ですが、ZoiperなどのIP電話の統合管理ソフトと接続して利用する形になるようです。設定方法はこちらのPDFにまとまっています。
https://encryptotel.com/files/OtherMobile.pdf


PBX
PBXとはPrivate Branch Exchange (構内交換機) の略で、企業内で電話交換をするための装置になります。いわゆる、「内線」を実現するための機械、仕組みです。最近では複数拠点間でIP通信を実現し、電話代を抑えることが可能なクラウド型PBXも登場しています。EncryptoTelはこのクラウドPBXの一種としてカテゴライズできるかと思います。


基礎から始めるIP-PBX[第1回 IP-PBXのイメージを掴もう] | Call Center Trends


クラウド全般にいえることですが、企業がクラウドを導入しようというときに最も懸念する点が「セキュリティ」です。複数社で機能を共有することで規模の経済が働くため、一般的にクラウドのほうがコスト面で優れていますが、外部ネットワークに接続する必要があることから、盗聴の危険性は少なからず上昇します。これに対して、例えばクラウドベンダーのAWSなどではVPNだけではなく、専用線の引き込みを認めるなどしてセキュリティに対する懸念払拭に取り組んでいます。

仕組み

さて、肝心のEncryptoTelのWhitepaperを読んでみます。しかし、残念ながら、Whitepaperを読んでも思想やら、提供予定の機能紹介ばかりで、技術的な仕組みが全く書かれていません(笑)。推測100%ですが、以下のような感じかと考えています。


ユーザ登録機能:ブロックチェーンを利用
PBX機能:ブロックチェーンを利用+PBX用のスーパーノードを構築 (?)
通話履歴管理+課金機能:ブロックチェーンを利用
通話機能:通常のP2P通信を利用


例えばSkypeでは、ユーザ登録情報を中央のサーバで一元管理しています。その部分は確かに中央集権的な仕組みを利用せずとも、ブロックチェーンを利用することができるのでサーバ構築・運用費用分のコスト削減は可能かと思います。


また、ブロックチェーンとは一切関係がありませんが、Bitcoin / Litecoinでの利用料支払いを認めることで (他にはUSD, EURで支払いが可能)、通話通信だけでなく、支払いに関しても匿名性を担保しようとしています。

開発方針

現在β版としてEncryptoTelがサーバを保有する形でのクラウド型システムを提供しているようです。ICOにより開発資金を集め、現在のクライアントサーバ型のシステムから、ブロックチェーンを利用したシステムに変更を図っているようです。

トークンの用途

トークンはPBXやIP通話の利用料の支払いに利用されるようです。BitcoinやLitecoinでの支払いも同様に認めるようですが、ETT (EncryptoTel Token)を利用した場合は、ディスカウントすることでETT保有意欲を高める政策です。それに加えて、ETTを保有することで、EncryptoTelの意思決定への参加や、経営状況を確認するサイトへのアクセスができるようになる予定です。
The EncryptoTel Token (ETT): fuel for our telecommunications ecosystem



また、トークンの管理方法は少し特殊な方法を採用しており、EtheruemとWavesの2環境でシームレスにトークンを保持する仕組みになっています。この仕組みの実現には、Blockswapが利用されています。ちなみにBlockswapは次号でお届けする予定の、「MobileGo」でも使用されており、ICOの際のスタンダードになりつつあるのかもしれません。
What is BlockSwap and why will MobileGo use it? — Steemit


問題点

PBXの仕組みをどのようにブロックチェーン上で実現するつもりなのかの詳細がありません。PBXを実現するためには、当然ですがPBX内のネットワークと外部の電話網を接続する必要があります。当然ブロックチェーン上でPBXを実現しようとする場合も同様で、ブロックチェーンを保持する各ノードから既存電話網に接続されている必要があります。


通話だけを行うノードもブロックチェーン上に存在すると仮定すると、一種のスーパーノードとしてPBXノードを定義する必要があります。仮にこのPBXノードをEncryptoTelが維持する構成だとすると、結局既存のクラウド型PBXとやっていることは同じになりますので、ブロックチェーンを利用する必要がまったくありません。


唯一新規性があるとすれば、ペイメントまで含めた匿名化ですが、これに至ってはPBX用のブロックチェーンとは一切関係ないため、例えば既存のPBX業者がBitcoin支払いを認めたらそれだけで新規性は失われてしまいます。


肝心の通信暗号化にしても、Skypeなどでも既に採用されているTLSを利用しているだけで新規性は全くなく、ブロックチェーンを利用する必要性も特にありません(おそらく通信はSkypeなどと全く同様のP2P通信でしょう)。

結論

開発資金を集めるためだけのICOのように思えます。既存のクラウドPBXで十分でしょう。




あとがき
EncryptoTelはともかく、ICOプロジェクトを調べると、既存ビジネスや技術の勉強 (今回だと、PBX)ができていいですね(笑)

Bitcoin紀行 in シンガポール

ある朝、目を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。私はシンガポールのランデヴーホテルにいて、土曜の朝をどう過ごそうかと、ベッドの中で考えていた。


Bitcoinを使ってカフェをめぐる。ジャカルタでは到底できないことであるが、シンガポールでならもしかしてという思いがあった。シンガポールは元々はマレー人の土地を、イギリスのラッフルズが開発した土地であるが、インド洋と太平洋を結ぶ重要な場所に位置したことから、貿易港として発展してきた街である。貿易港という性格から、多様な人種が共存しており、いかにもBitcoinを使うのに適していそうな土地柄であった。


そのような思いを抱きながら、シンガポール行きの飛行機に乗り込んだまでは良かった。しかし、シンガポールにいざ着いてしまうと、当初の目的を忘れさせるシンガポールの魅力に抗えなかった。


マーライオン、マリーナベイサンズ。書いてみると陳腐だが、どれもシンガポールを代表する観光スポットであり、一度は行って見なければと思ってしまう。さらに、実際に行ってみるとどこも想像を超えて楽しませてくるので、ますます深みにはまってしまう。
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結局、着いた初日は観光に明け暮れてしまい、Bitcoinを使ってカフェをめぐるという当初の目的はすっかりと頭から消え去ってしまっていた。




そんな中到着2日目、土曜の朝を迎えたわけであるが、Twitterを見ているとあるワードが目に飛び込んできた。


Bitcoinはコーヒーを買うためのものではない」


この私がやろうとしていたことを真っ向から否定する言葉を見た時、私はもうぐずぐずとしてはいられないと思ってしまったのだった。シンガポール人 - 中国人というべきかもしれないが - は合理的な人種だ。オランダ、イギリス統治時代には植民地官僚として、都市設計や警察機構を担っていた。そこには、現地人の反感を直接支配層に向けないという白人支配層の狡猾な理由もあったわけだが、中国人の持つ合理的な思考もその一因であろう。


そんなシンガポール人がBitcoinの決済をしていないというのは、Bitcoinがコーヒーを買うような少額決済に向かないという、ある種の証拠を与えてしまうことになる。そのような間接的な証拠を提示するわけにはいかなかったのである。

Aristry Cafe

外は快晴であった。雨の中出て行くのは憂鬱だが、この天気であれば、気分よく出発できそうだ。地図を見ながら、この日のターゲットを決める。とりあえず1件目として選んだのは、Aristry Cafeであった。ここを1件目に選んだ大した理由はなく、以前あるブログでそこのコーヒーを酷評していたのが気になったからであった。


だいたい、Bitcoinを受け入れるようなコーヒー屋がうまいコーヒーを出すわけがないか。そう思いながら、マリーナベイサンズを抜ける約5キロの心地よいランニングの後に、アラブストリートの近くに位置する、そのコーヒー屋にたどり着いたのであった。


店内は朝の光が絶妙に差し込んでおり、気持ちの良い空間が広がっていた。注文したコーヒーとハッシュドポテトのブランチメニューもなかなかの味であった。ビットコイナーらしくない味だ、と思いながらも、これがビットコイナーのグローバルスタンダードなのかと妙な感慨に耽りながら、ランニングでクタクタの胃に朝食を流し込んだ。
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胃に満足感を覚えた後、会計をしようとレジに向かうが、この瞬間はいつも一種の背徳感を覚える。フィアット通貨が世の中のスタンダードなのに対して、大して便利でもないBitcoinをあえて使うのはたいそうな言い方をすれば革命家的な、悪くいうと少しイタい人というレッテルを貼られてる気になってしまう。もっとも、受け取る側も同じ穴の狢であるので、気にする必要はないわけだが。


「この店ではBitcoinが使えるって聞いたんだけど?」
Bitcoinね?ちょっと待ってね。」


幸先順調である。少し褐色の肌をしたマレー系美人がBitcoinと囁くことに微かな興奮を覚えながら、その瞬間を今か今かと待った。


しかし、どうも様子がおかしい。この美人な店員はあまり決済の仕方が分かっていないようであった。たまらず奥から、こちらもマレー系と思われる男の店員がでてくる。


Bitcoinは今は取り扱っていない。」


あー、そうか。ビットコイナーにしては、おしゃれなカフェだと思っていたが、使えないということを聞いて、納得がいった。


男の店員曰く、最近はトランザクションの承認に時間がかかるから、決済をやめているとのことであった。所詮、その程度のビットコイナーだったのだなと思いつつ、シンガポール人のビジネス感覚にしばらく感心してしまった。彼らにとってBitcoinは手段であって、目的ではないのだと。


New Green Pasture Cafe

気をとりなおして、2件目のNew Green Pasture Cafeに向かう。ここはGoogleマップ上の評価で、星5を付けており期待していたカフェであった。


しかし、ビルの前まで行ってそれが大きな期待外れであることがわかった。カフェは中華街のフォーチュンビルという建物の4階に入っていたのであるが、外見からはどう見てもBitcoinが使えるようには見えないのである。
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おそらく周辺の再開発をした際に、立ち退きを迫られた中小小売業者が優先的に入居したビルなのであろう。Bitcoinの先進的なイメージとはかけ離れた、東南アジアのゴタっとした空間が広がっていた。だいたい、フォーチュンビル、占いビルという名前からしてセンスがない。


4階に上ると、これまた期待ができない雰囲気の店があった。New Green Pastureと言うから、緑の多い公園内にでもあるのかと思ったが、実態は緑色の照明を灯して、店内で薬草を栽培する怪しげな店であった。幸か不幸か、まだ営業時間外であったため、この日はホテルに帰ることにする。1日で2回も痛い目を見るのは精神衛生上よくなかった。


その日はインド人街でカレーを食べた後、ガーデンズバイザベイに行き、久々に都会の、だが新鮮な空気を味わった。同じ東南アジアでもここまで差が出るのはどこに原因があるのかと、答えの出ない考えに耽りながら、その夜は更けていった。
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翌朝、前日と同じようにランニングをしながら、次のカフェに向かうことにする。Sarniesというこちらもなかなか評判の良いカフェであった。店の前まで行っても、前日AristryやNew Green Pastureに感じた違和感はない。オシャレ過ぎず、かといって雑多でもない、シンプルないかにもBitcoinを取り扱っていそうなカフェであった。


意を決して乗り込もうと思ったのだが、またもやアクシデントに見舞われる。そのカフェはモールの中にあるのだが、モールの自動ドアが開かないのだ。扉の前を行ったり来たりするが、一向に開かない。おかしい、と思い、Googleマップを見ると、開店時間は確かに8時と書いてある。


もう少し粘ろうか、そうも思ったが、時計の針は既に10時を回っている。空腹感には勝てず、結局別のカフェに行くことにしてしまった。


喜園珈琲店は、地元の人たちが朝ごはんを取ろうと賑わっていた。ビーフンや揚げものなど色々な誘惑があったが、店の定番であるカヤトーストとコーヒーを頼むこととする。カヤトーストは一般的には薄手のパン生地にカヤジャムと言われる甘みの強いジャムを塗った料理だが、ここのカヤトーストは厚手の食パンを使用しており、独特のフワフワ感とジャムの甘さがマッチした絶品であった。
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さて、ホテルに帰り、この後どうするかと考えた時に、結局1店舗しかBitcoin取扱"候補店"に行っていないことに気がついた。Bitcoinを使ってカフェを巡るという酔狂なことをしようとしながら、結局何もやらずに貴重な休日を潰そうとしている。だめでもともと、トライしてみよう。そのような気持ちが、頭の中を駆け回った。


その日の午後、私は再びNew Green Pasture Cafeにいた。時刻は2時頃、意外に人も入っている。少なくとも、大麻の販売所ではない、と安心して入って行ったが、なんのことはない、ベジタリアン向けのお店であった。
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先払い式である旨を丁稚風の男に告げられ、おもむろに尋ねてみる。


「ここではBitcoin使える?」
「ワット?」
Bitcoin!」
「ジャパニーズ円は使えねえよ」


これはダメだ。BitcoinのBすら知らない。諦めて、ベトナム風春巻とコーヒーを頼むが、お昼に銀座いつきの天丼を食べて満腹な上に、春巻自体大して美味しくもなく、なぜここにトライしてみようと思ったのか、少し冷めたコーヒーをすすりながら考えこんでしまった。


春巻を食べていると、途中店主と思われるおばあさんが食事の感想を尋ねてきた。老獪そうな雰囲気から、もしかすると、最初の店員ではなく、このおばあさんと最初から話していれば、実は…と裏でBitcoin取引ができたのかもしれないが、それを聞く気力もなく、新緑の牧場を後にした。

Sarnies

カフェがダメなら…と、BitcoinのATMに向かうことにする。クラークキーセントラルの地下には、BitcoinのATMがあるという噂であった。そこに行けば、少なくともBitcoinのチャージをすることはできるし、うまく行けば情報も手に入る。私はそこに賭けてみることにした。


シンガポールリバーを望むクラークキーは夜になると、川沿いのバーやクラブで賑わうデートスポットである。その川沿いにあるクラークキーセントラルの地下一階に、中華系の店主が経営するシルバーショップがあり、そこにはBitcoinのATMが設置されていた。そこで持っていたフィアットを全てBitcoinに変えると、店主から情報を聞き出すことにした。
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Bitcoinが使えるって言われてるレストランにいくつか行ってみたけど、どこも使えないね。どこか使えるところ知ってる?」
「ほとんどないな。ただ、このデビットカードにチャージすればどこでも使える。こっちのが、ベターだ、カンファタブルだ、ラピッドだ、セーフティーだ!」


そういうことを聞きたかったわけではない。シンガポール人の野暮さを嘆きながらも、こちらも無理してBitcoinを使おうとしている論理的な理由があるわけではなかったため、弱みがなかったわけではない。そこにBitcoinがあるから、とでもいえば格好がつきそうなものだが、そのBitcoinが使える店を探し回っているのであるから、話にならない。結局、店主もBitcoinを使えるカフェを知ってはいないようであった。


しかし、少なくともフィアットBitcoinを繋ぐ接点を見つけられたことで、気持ちは少なからず高ぶった。こうなったら、最後にあのSarniesだけでも試してみようじゃないか。


いざ、切符を買い、電車に乗り、ふと店の位置を再確認しようと思いGoogleマップを開いた。Sarniesと打ち込むと、朝に訪れたSarniesとは異なるところに赤いマークが表示されている。


なんと朝行ったSarniesは全く関係のない店であった。危うく全く関係のないSarniesに行き、Bitcoinが使えないことを嘆いてジャカルタに帰るところであった。逆に、このタイミングで気づいたのは、一人のビットコイナーへのsatoshiからの啓示のようにも思われた。しかも、方向的にも乗り換えがスムーズにできそうだ。


本物のSarniesは中華街の入り口にある。店はきゅっと細長くこじんまりとしていたが、外にはオープンテラスもあり、過ごしやすい雰囲気であった。よく欧米人は何にでもcozyと表現するが、このカフェはまさにcozyと言う言葉で形容するのがぴったりなカフェであった。
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カフェラテを注文し、おもむろに、この旅行3回目の言葉を口にした。


Bitcoin使える?」
「使えるわ」


今回は大丈夫だろう。中華系の美人にそう言われ、やっぱり中華系美女に敵うものはないと思いながら、その時を待った。今思い返せば、Aristry CafeとNew Green Pasture Cafeの失敗もこのフィナーレのためにあったのだと、不思議な感慨にふけっていた。


「ここにタッチして」


そう言われ、戸惑いを覚えた。タッチ?QRコードじゃないのか。よくみるとその端末にはVISAと誇らしげなマークが鎮座している。


Bitcoinで払いたいんだけど」
「これでしょ?」


もしかして、この店ではBitcoinデビットカードで支払うことを、Bitcoinで支払うと言っているのか。確かに店側からしたら合理的だ。二重払いに悩むこともなく、一瞬でトランザクションは成立する。しかしだ。多くのビットコイナーがしたいことはそういうことではないはずだ。Bitcoinを使って、何かを買う。そこに意味はない。しかし、Bitcoinそのものを使うことに楽しみを見出しているのだ。


そんな想いも虚しく、QRコードの提示はなかった。しかも、先ほどフィアットを全てBitcoinに変えたため、支払うすべが残っていない。財布を見るとVISAのクレジットカードがある。助かった、と思った反面、それが意味することが頭の中を巡り、敗北感に打ちひしがれた。


シンガポール、そこは合理的な国だ。でも、何かが足りない。合理性を超えて面白いと思ったことを面白くやるという点が欠けているのかもしれない。カフェラテがやけに美味しかったことが、その想いに拍車をかけた。




帰りの空港で、シンガポール滞在の感想を書くアンケートがあった。シンガポールらしく、紙スタイルの原始的なものではなく、電子化された掲示板のようなスペースである。最後に何を書くかは決まっていた。


The bitcoin had failed in Singapore.



(*) この物語は実在の都市、出来事を元にしたフィクションである。

紹介したお店一覧

Aristry Cafe

New Green Pasture Cafe

Sarnies



inspired by 深夜特急

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

シンガポールBitcoinが使えるお店一覧
Ad Categories Bitcoin Accepting Restaurants, Cafes and Bars in Singapore

UASFによるSegwit導入の考察 - ブロックチェーン分岐の永続化を許容するか -

現在Bitcoin界には2種類の派閥があり、分裂危機が取りざたされています。


純化すると、ひとつはマイナーの利益を代表するBitcoin Unlimited、もうひとつは多くのユーザ(ノード)の指示を集めるBitcoin Coreです。分派のきっかけは、Bitcoin脆弱性(Malleability)に対応するSegwitの導入に関する意見の相違です。Segwitの導入はトランザクション手数料を低下させることにつながり、マイナー利益を損なうことになるため、Segwitを推進するBitcoin Coreに反対する形でBitcoin Unlimitedが生まれました。


Segwitの導入には、マイナー(正確に言うと、過去2016ブロック)の95%以上がSegwit導入賛成シグナルを送っているという条件があり、現在のシグナリング(30%程度)を勘案すると、いつまでたってもSegwitの導入は実現されない状況です。そのような状況で、ある匿名ユーザが「Segwitが導入されない場合にはユーザ主導でのSegwit導入 (UASF、User Activated Soft Fork)を実施する」という提案を行い、BIP148として審議中の状態になっています。

Bitcoinのバージョンアップ方法

Bitcoinのバージョンアップ方法は、大きく分けて2種類あります。ひとつは旧バージョンと新バージョンの互換性が完全になくなるハードフォーク、もうひとつは旧バージョンから見ても、新バージョンで採掘されたブロックが有効に見えるソフトフォークです。今回は、ソフトフォークに的を絞って話を進めます。


従来、Bitcoinのソフトフォークの際には、BIP9で定義されている方法を利用してきました。


BIP9とは、マイナーがブロックを採掘する際に、ブロック中のversion bitと呼ばれる領域に指定されたbit値をたてることで、そのソフトフォークの賛成を表明する方法です。逆にbit値をたてないことで、そのソフトフォークに対して反対を表明できるわけです。以下の図で言うと、Versionと書かれている部分の一番下の桁がSegwit導入への賛成/反対を示しています。

導入賛成/反対状況
2 (16進数) =Segwit導入賛成
0 (16進数) =Segwit導入反対(or 未準備)。

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BIP9で定められている通り、過去2016ブロック(約2週間)のうち95%のブロックがSegwit賛成を表明している状態になった時、Segwit導入がロックインされます。そして、さらに2016ブロック経過したタイミングで、Segwitが正式に導入されることになります。つまり、投票期間と実際の導入期間には、ずれがあるということになります。

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Bitcoin Core :: Version bits FAQ for miners

UASF

これに対して、UASFとはマイナーの投票によらずにSegwitをソフトフォークで実現する方法です。具体的には、ノードが利用するクライアントソフトウェアに、「Segwitが導入されていないブロックを無効なブロックと判定するコード」を組み込むことで、もしマイナーがSegwit未導入のブロックを採掘したとしてもノード側がそのブロックの受け入れを拒否するというアプローチです。


現在提案されているBIP148の実装では、2017年10月1日以降Segwit導入がロックインされていない場合には、Segwit未導入のブロックを拒否するという実装になっています。
bips/bip-0148.mediawiki at master · bitcoin/bips · GitHub


ちなみに、「ブロックチェーン分岐の永続化」を許容するかしないかで、UASFのハードルは大きく変わってきます。

ブロックチェーン分岐の永続化を許容しない場合

まず、ブロックチェーンの分岐の永続化を許容しない場合は、UASFを実施するにあたって、「マイナー」の少なくとも50%がSegwit導入マイナーである必要があります(ただし、必ずしもSegwit導入時点で50%を満たしている必要はなく、UASFによってSegwit側に鞍替えするマイナーがいる可能性も考慮する必要はあるかと思います)。


理由を簡単に見てみましょう。
Segwit導入ノードの比率に関わらず、Segwit未導入マイナーがSegwit未導入のトランザクションを含むブロックを採掘した場合には、当該ブロックがSegwit導入ノードで承認されることはありません。


一方、Segwit導入マイナーはSegwit導入済みトランザクションのみを採掘するので、必然的にブロックチェーンは分岐することになります。注意が必要なのは、ブロックチェーンの分岐はブロックチェーンの設計思想から許容されていることであり、重要なのはブロックチェーンの分岐が永続化するかどうかです。


さて状況を改めて考えてみると、旧バージョンを利用しているノードは新バージョンのトランザクションも正当なものとみなしますので、単純にBitcoinのルールに従い、「長さの長いブロックチェーンを正」とみなします。一方、新バージョンを利用しているノードは旧バージョンブロックチェーンを無効とみなすので、「新バージョン側のブロックチェーンを正」とみなすことになります。ブロックチェーンの分岐が永続化しない条件は、「長さの長いブロックチェーン」が「新バージョン側のブロックチェーン」と同一であることです。結局のところ、50%以上のマイナーがSegwit賛成側に最低限存在しないと、ブロックチェーンの分岐は永続化することになります。


ということで、ブロックチェーン分岐の永続化を防ぐためには、少なくとも半数のマイナーの協力を得ないと実現できないということになります。もちろん、この割合はBIP9型のソフトフォークに必要な95%という要件からはかなり緩和されていますが、Segwit賛成マイナー率は30%台をうろうろしていることを考えるといまだに厳しい比率だと言えます。

Segwit賛成票投票状況
Percentage of blocks signalling SegWit support - Blockchain

ブロックチェーン分岐の永続化を許容する場合

ブロックチェーン分岐の永続化を許容する場合には、無条件でUASFを発動できます。しかし、ブロックチェーンが完全に分岐するため、Ethereumのハードフォークのように2種類のコインが出来上がることになります。Ethereumの例で分かる通り、ブロックチェーンの完全分岐はコイン価格を下落させ、Bitcoinへの支持を弱めることにつながりかねません。


結局、ブロックチェーン分岐の永続化を許容するUASFの効果は、Bitcoin Unlimited側がブロックサイズの上限を1Mバイト以上に設定するハードフォークを行うのと同じになります(=完全にチェーンが分岐)。


6月10日追記
以下の動画で紹介されている通り、Re-Organaize (BIP148未導入チェーンが最初は長かったのが、BIP148チェーンの長さが途中で上回ると、BIP148未導入チェーンが無効になる)される可能性もあるので、ハードフォークの効果と同じとは言い切れないですね。ただ、Re-Organaizeされるまでは、2つのコインが発生している状態になるので、一時的でもコイン価格の下落は避けられません。

UASF/BIP148特別収録 with 大石哲之さん


最近の動き

3月27日にBitfuryがUASFによるSegwit導入支持を表明したブロックを採掘したことで話題になりました。

Bitfury Mines a Block Signaling UASF Mandatory Segwit Deployment - Bitcoin News


実際にブロックを見てみると、Bitfuryが採掘したブロックのCoinbase (マイナーが採掘報酬を埋め込むトランザクション) に「Segwit」、「BIP148」という文字が刻まれていることが分かるかと思います。

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Transaction 82fcb9de58956b125256b9fe6a9af731f8aa2386a20180fbdc9a908522416c67 - chainFlyer


ただ、ここまで見てきた通り、UASFは特定日以降Segwit未導入ブロックを無効とみなすことでソフトフォークする手法ですので、今回のBitfuryによる採掘ブロックはUASFに対する支持表明をしたに留まります。

Ethereumプロジェクト紹介 第1回 Melonport

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最近のBitcoin分裂騒動や、Ethereumを利用したアプリケーション開発コンソーシアムにMicroSoftなどの大企業が参入したことにより、急速にBitcoinとEthreuemの時価総額の差が縮まってきています。EthereumはBitcoinと異なり、チューリング完全なプログラムを実行できることから、分散アプリケーション (DAPP)の実行基盤として注目を集めています。


今回から、Ethereum上で新たに登場してきた分散アプリケーションを調査、紹介していこうと思います。

Melonport 概要

記念すべき第1回として、分散型のアセットマネジメント基盤であるMelonportを取り上げたいと思います。なぜMelonportかというと、CEOのMona El Isaさん(ゴールドマンサックス出身、26歳でゴールドマンサックスVice Presidentとかいうとんでもない経歴笑)が美人すぎて、紹介動画を見ていても飽きないから笑

紹介動画

Melonport - Asset management on Blockchain - Ethereum London


さて肝心の中身ですが、Melonportはデジタル資産への投資を行うファンドマネージャーの行動をSmart Contractで統制するとともに、Ethereum上のブロックチェーンに取引内容を刻み込み監査可能にすることで、これまで不透明な世界であったファンドを、透明性が高い状態にすることを目的としています。


また、ヘッジファンドをスタートするためには、おおよそ1億5000万ドルの投資額が必要とされています。そのため、これまでは限られたプレーヤーでヘッジファンドは構成されており、手数料もETFなどと比べると非常に高価でした。Melonport Protocol上でファンドマネージャー業務に必要なすべての機能を提供することで、ファンドの選択肢を増やし、ファンドコストを切り下げることを目的としています。


ちなみにMelonportという名前は、ギリシャ語で「未来」を意味する言葉から取っているらしいです。
Melonport | Blockchain software for asset management

Melonportの仕組み

投資対象

Melonportでは投資対象となる、デジタルアセットを以下のように3分類しています。

  1. 実物資産にペッグした資産(金とレートが常に一致しているような資産)
  2. 暗号通貨などのデジタル資産
  3. デジタル資産のデリバティブ


上記例で分かる通り、投資先は暗号通貨に限定されているわけではなく、Smart Contractで制御できるすべてのデジタルアセットを含んでいることになります。究極的に言えば、いかなる実物資産もそれをペッグした形でデジタル資産化できるので、どのような資産であってもトレード対象とすることができるということになります。

ポートフォリオ

Melonportではファンドマネージャーは誰でも自らファンドを作ることができます。このファンドのことを、Melonportではポートフォリオと呼んでいます。ポートフォリオは技術的にはCoreとModuleに分けられます。CoreとModuleはいずれも、 Ethereum上のSmart Contractとして作成されます。


Core
Coreはどのポートフォリオでも必須となる構成要素となります。Coreは、ポートフォリオのルールや性質を決めることになる、Module群を束ねる役目を持っています。


Module
Moduleはポートフォリオが資産を取引するのに必要となる取引所の情報や、取引を実施するにあたって必要となるルールを提供します。ファンドの目論見書のようなものであり、Smart Contractでこの目論見書の内容を強制でき、かつ監査可能であることがMelonportの一番の特徴と言えます。


このModuleは誰でも作成することができ、Moduleの開発者はそのModuleの対価としてのCommissionをMelonportのトークンであるMLNで請求することができます。イメージとしては、Apple Storeを想像するとわかりやすく、Melonport上にいくつものアプリケーション(Module)が登録され、ファンドマネージャーはそれを選択して対価としてMLNを支払うことで利用することができるようになります。


例えば、Register Moduleとよばれるモジュールでは、投資対象のデジタルアセットや取引を行う取引所をSmart Contractを利用することにより制限することができます。最近「みんなのクレジット」で投資資金の使い込みやポンジスキームが発覚しましたが、そういったこともMelonportを使用することで防止することができます。


また、金融専門家がCEOなだけあって各国の規制対策も検討しているようで、モジュールにはKYC対応のためのモジュールなども用意されています。


投資方法

ポートフォリオへの投資方法は2種類が検討されています。ひとつはポートフォリオのShareをどこかしらの市場から購入すること、もうひとつはEtherを払い込むことで対象のポートフォリオの持分(Share)を購入することです。あえてEtherと書いたとおり、ポートフォリオへの投資の際にはMLNを使用する必要はなく、ETHを使用する仕組みになっているようです。


投資先のファンドを選択できるポータル画面
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なお、2番目のEtherを払い込むことによりポートフォリオに投資を行う場合には、価格がどのように決まるかが重要になります。投資家としてはポートフォリオを通して原資産に投資したいのであって、ポートフォリオの人気に対して賭け事をしたいわけではないからです。そのことを考慮して、Melonportでは需要により決定される価格ではなく、ポートフォリオに組み込まれた資産価格を元にShareの価格が決定される仕組みになっています。


また、投資信託の購入の際にはよくファンドの購入手数料が重要視されます。購入手数料の仕組みは今現在存在しているファンドの仕組みとほぼ同じであり、2種類の手数料から構成されています。ひとつは固定で必要となるManagement Fee、もうひとつはActive Fund (市場平均ではなく、売買によって市場平均を超えた超過利益を狙うファンド)を購入する場合のみ必要となるPerformance Feeです。

開発タイムライン

2016年12月時点のCOIN INTERVIEWでのコメントを参考にすると以下のようなタイムラインで開発を目指しているようです。現在はPoC (実現性の検証)が終わり、初回のICOを完了した状態です。今後2017年8月に向けて開発を進めていく予定です。

2017年2月 ICO
2017年8月 Draft Versionとして実装完了
2019年2月 ガバナンスの強化やフロントエンドの強化を完了
Melonport Announcement: Token (MLN) Pre-sale February 15th, 2017 — Contribution and Specification…


まとめ

個人的にはけっこう期待しているMelonportを紹介しました。ETFの登場で分散投資は簡単になりましたが、これまではETFを組成できる人は証券会社の限られた人たちであり、投資先も限定されていました。Melonportを使用することで、これまで投資できなかった対象に安価な手数料で簡単に分散投資できるようになることが期待されます。


第2回の対象はまだ未定です。心に響くプロジェクトがある方は教えて下さい笑

暗号通貨時価総額ランキング (2017年3月末)

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今年初めの以下の記事で、2016年年末時点での暗号通貨時価総額ランキングをまとめました。年初からBitcoinの価格が上昇する一方、BitcoinはBTC (Bitcoin Core)とBTU (Bitcoin Unlimited)への分裂が避けがたい状況であり、分裂直後はいずれのコインも暴落することが予想されています。それを受けて最近のBitcoin相場は非常に不安定な状態になっています。また、Ethereum、NEMなどのアルトコイン勢もBitcoinの価格上昇や、Microsoftなどの大企業が絡んだプロジェクトがスタートしたことをきっかけに価格が上昇しています。

2016年末時点での時価総額ランキング
cryptocoin.hatenablog.com


暗号通貨の時価総額をまとめなおすにはいい機会だと思いますので、現在の状況を振り返ってみたいと思います。

生データはこちら
coinmarketcap.com

2017年3月 暗号通貨時価総額ランキング(カッコ内は2016年末時点)

1位 Bitcoin (1位) 147億ドル (155億ドル)

前回のランキングとほぼ同じ金額でBitcoinが1位です。前回のランキング時点では、1BTC=961ドルだったのが、現時点では1BTC=910ドルまで下がってしまっています。2017年は中国のPBoC (中国人民銀行)による突然の規制や米SECにBitocoin ETFが否決されたニュースなどいくつかの下落要因がありましたが、その混乱にもかかわらず1,000ドルを超える金額をキープしてきました。しかし、BTC/BTU分裂騒動では大きく値段を下げています。


外生的な下落圧力にはBitcoinの強さが証明されましたが、内側からの攻撃への耐性はまだまだ実験の途上ということでしょう。

2位 Ethereum (2位) 46億ドル (7.1億ドル)

前回から約7倍(!)値上がりしたEthereumが第2位です。順位は変わりませんが、DAO事件をきっかけに分裂したEthereum Classicを時価総額の面で大きく引き離してきました。ちなみにEthereum Classicも前回から比べると、約1.5倍の値段にはなっていますが、Ethereumと比べるともう勝ち目はなさそうです。


この3ヶ月でのEthereum関連のビッグニュースとしては、MicrosoftやJP Morganなどの大企業がEnterprise Ethereum Alliance (EEA)という組織を結成し、Ethereum上でアプリケーションを作成しようとしているニュースがあげられます。最近のIT業界界隈では、企業内に閉じた情報システムから脱却し、サプライチェーン全体をカバーして企業間ネットワークを作り上げていこうという動きがあり、Ethereumはそのプラットフォームとして注目を集めてきている状態です。
Here's Why Microsoft, JP Morgan Chase And These Entrepreneurs Are All-In On Ethereum | Inc.com


さらに最近では、Bitcoin上でConterPartyトークンを利用していたStorjが、Ethereum上のトークンであるERC20に鞍替えを表明するなど、Bitcoinの混乱を避けてEthereumを使用しようという動きが加速しそうです。StorjのCEOはEthereumのネットワークが拡大していることを鞍替えの理由としてあげており、Bitcoinに変わってEthereumが暗号通貨界の代表になることを予想しているといえそうです。
www.coindesk.com

3位 Dash (7位)6.8億ドル(0.8億ドル)

Ethereumの陰に隠れていましたが、地味にDashの時価総額は前回から8倍以上に跳ね上がり、3位に浮上しました。Bitcoinが全取引を第3者が閲覧できる透明性の高い仕組みなのに対して、Dashは取引を第3者が閲覧できない匿名性をその特徴としています。匿名性を特徴とする通貨は、Dash以外にもMoneroやZcashがありいずれも時価総額を上昇させていますが、DashはMoneroを抜き去り匿名通貨界隈では一歩飛び抜けてきた状態です。


cointelegraphの記事では、今回の急上昇の理由を以下のように分析しています。ひとつは、決済会社のBlockPayとのパートナーシップを発表し、Dashを決済手段として使用するオプションが増えたことです。


しかし、価格上昇の要因の本命は、もうひとつの理由である投機的な理由によるものです。
記事では、Dash取扱量1位のPoloniexでDashの信用取引を提供していることを、理由のひとつとしてあげています。信用取引でショートしていた人たちが、Dashの価格上昇による損失を抑えるためにDash購入に走ることで、結果としてさらにDashの価格が上昇するという正のスパイラルが発生していると説明しています。当然この動きはショートしている人たちがDashを一通り購入し直したタイミングで動きが止まりますので、価格上昇が継続することはないと思われます。

4位 Ripple (3位) 3.8億ドル (2.4億ドル)

4位はRippleです。時価総額はあげているんですが、いまいちパッとしないです。特に大きなニュースはなく、他の暗号通貨の価格上昇に乗っかって、少しだけ価格が上昇したといった感じです。その証拠に、他の通貨が7倍、8倍の値上がりをしているのに対して、Rippleは1.6倍程度の上昇にとどまっています。

5位 Monero (5位) 3億ドル (1.9億ドル)

5位はDash同様匿名型通貨のMoneroです。2017年当初は匿名型通貨はMoneroが主流になる勢いで、海外の掲示板でのアンケートでもMonero派の方が多かったようなのですが、資金はDashに向かってしまったようです。


Moneroについてはそこまで大きなニュースはなかったと思いますが、2017年2月に複数コインをひとつのウォレットで管理できるJaxxが、予定していたMoneroのウォレットサービス提供を中止したことを発表しています。原因としてMonero Developer Communityのサポートが不足していることをあげており、LightweightのAPIがサポートされていないことや匿名化の仕組みのサポートがうまくできていないことを理由としています。
Jaxx Cancels Monero Integration, Cites Difficulties Working With Community

EthereumがBitcoinを超える日は来るのか

EthereumはBitcoinの価格の3分の1まで迫っており、Bitcoinが分裂した際には資金逃避のためにアルトコインに資金が流れ込むことが考えられることから、EthereumはBitcoin分裂後暗号通貨界のトップに躍り出ることが予想されます。


2016年末まではBitcoinの1強でその立場は盤石かと思っていましたが、意外に早くBitcoinが表舞台から姿を消すことも考えられます。多くの発明品は初代の製品がそのまま市場の主流を占めたことは少なく、その改良品が世の中のスタンダードとして一般の人々に受けれられてきました。Blackberryに対するiPhoneのように、Bitcoinのその役目を終えて静かに息を引き取っていくこともあるのではないでしょうか?

2017年3月25日時点 暗号通貨ランキング
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まとめ

Bitcoinの価格がガラッと大きく動いた3ヶ月でした。これまでも外側からの攻撃には幾度となく耐えてきたBitcoinですが、内側からの攻撃はある意味初の体験であり、結果がどう転ぼうと大きな教訓を残しそうです。


以前「Bitcoinは民主的か?」という記事を書いた際には、Bitcoinは開発者とマイナーによる専制政治であり、民主的とは言い難いという結論を書きました。しかし最近では、仮にハッシュパワーに勝るBitcoin Unlimitedが一時的に優勢になったとしても、利用者がBitcoin Coreを利用している限り、最終的にマイナーは価格の下落に耐え切れず、Bitcoin Coreに戻らざるを得ないという議論もよく見ます。もしそうだとすると、最終的な意思決定者は開発者やマイナーではなく利用者となり、Bitcoinネットワークは民主的だという結論になりそうです(=ハッシュパワーではなく、利用者の多数決で意思決定が行われる)。
cryptocoin.hatenablog.com


BitcoinBitcoin利用者主導で通貨として進化を続けるのか、Bitcoinを見限ってアルトコインに移っていくことで自滅の道を歩むか。私は何があろうがHODLします笑

NEMのスーパーノードの役割

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最近Twitter上では、NEM上のApostilleを使った取引が紹介されたり、スーパーノードを構築したりとNEMの話題で大盛り上がりです。NEMの価格も1月に入って大幅に上昇し、1XEMあたり0.000004BTCだったのが、現在は0.000006BTCで取引されています。


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https://www.coingecko.com/ja/相場チャート/nem/btc


今回はTwitterでも話題に上がったスーパーノードについて、Bitcoinにおけるフルノードとの違いもふまえてまとめたいと思います。

Bitcoinにおけるノード

NEMにおけるスーパーノードを説明する前に、Bitcoinにどのようなノードが存在するかを説明します。Bitcoinではノードの種類は大きく2つに分けられます。一つは完全なブロックチェーンを保持するフルノード、もう一つはトランザクションの検証はするものの、ブロックチェーンは保持しないため二重支払いの有無はフルノードに依存するSPV(Simplified Payment Verification)ノードです。


この2つのノードのうち、全ブロックチェーン保有するフルノードの役割はBitcoinのネットワークの安定にとって非常に大きなものです。しかし、Bitcoinにおいてはフルノードになるインセンティブがなく、以下の記事で触れられているようにフルノードにも何かしらのReward(報酬)を与えるべきではないかという議論があります。
Should Full Bitcoin Nodes Get Rewarded like Miners? - Bitcoin News


NEMにおけるスーパーノード

NEMの世界でもノードはBitcoin同様、2種類存在します。ひとつは全ブロックチェーン保有しNEMネットワークのインフラとなるスーパーノード、もうひとつはそれ以外の通常ノードです。Bitcoinにおいては全ブロックチェーンを保持して、自ら二重支払いの検証ができるノードはすべてフルノードと呼びますが、NEMにおけるスーパーノードは全ブロックチェーンを保持している以外に幾つかの条件があります。

スーパーノードの要件

ひとつ目は金額要件です。スーパーノードになるには、3,000,000XEM以上を保有している必要があります。以前の記事でNEMネットワーク上のApositlleを利用したXEMの貸借を取り上げましたが、この貸借の目的はスーパーノードを構築することでした。なお、300万XEMは現在の価値でおよそ2万ドル(約225万円)の価値があります。

2017年6月4日 Update
気づいたら1NEM=24円ほどになっていたので、現在だと7200万円ほどつぎ込まないとスーパーノードは構築できません。。。

https://twitter.com/mizunashi/status/828899530389065729
cryptocoin.hatenablog.com



もうひとつの要件はシステム要件です。スーパーノードは他のノードからブロックチェーン情報を参照されるパブリックな役割がありますので、スーパーノードになるためには応答性能であったり、ブロックチェーンが最新状態であったりするなどのシステム的な性能を求められます。この性能は毎日全スーパーノードを対象に計測が行われ、要件を満たしていない場合は後述する報酬を受け取れない仕組みになっています。
NEMの説明書 - スーパーノードの必要条件
NEM Supernode Rewards Program - Blog Posts - NEM Forum


このようにBitcoinにおけるフルノードとは違い、NEMのスーパーノードにはかなり厳しめの要件が課されています。

スーパーノードのReward(報酬)

NEMにおいてスーパーノードがBitcoinのフルノードと大きく違う点は、「スーパーノードを運営することで報酬を受け取ることができる」という点です。NEMの最初のブロック(nemesis block)において、Sustainability Fundと呼ばれる、NEMネットワークを運営するためのFundが作成されており、そのFundの一部がスーパーノード用の報酬としてあてられています。なお、Fund資金が枯渇した後は、ブロックに含まれるトランザクション手数料の一部がスーパーノードの報酬に当てられる予定です。

Update: Sustainability Fund, Final Redemption Numbers



2016年6月にこの仕組みがスタートした際には、毎日70,000XEMがスーパーノード用の報酬として用意されていましたが、2016年9月に140,000XEM/日まで拡充しています。今後この報酬額はだんだんと増額されていく予定です。


なぜNEMにおいてスーパーノードのRewardが重要かというと、NEMのコンセンサスメカニズムと関係があります。NEMはPoI (Proof of Importance)という誰もが低スペックのマシンで参加できる(Raspberry Piでも参加できるほど)コンセンサスメカニズムを採用しています。Bitcoinの場合は多くのマイナーがフルノードの役割も兼ねていますが、誰もがマイニング(NEMの場合はハーヴェスティングと呼びます)できるNEMの場合は、Bitcoin以上にスーパーノード(フルノード)を維持する努力が必要になります。そのためNEMにおいては特別に財源を用意して、スーパーノードを構築するインセンティブメカニズムを用意しています。


なお、PoIの報酬は取引手数料をもとにしており、スーパーノードに対する報酬とは別の財源を利用していることになります。ちなみに、NEMのスーパーノード報酬やPoIの報酬は税務上所得として申告する必要があるので、ご注意を!

Bitcoinなどの税務処理 (アメリカ編ですが、日本も大きくは変わりません)
cryptocoin.hatenablog.com

Proof of Workってなんだろう?

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Bitcoinを勉強していると必ず出てくるワード、「Proof of Work」。「仕事の証明」ってなに?、タイムシートのこと?と思われる方も多いかと思います(いない)。自分の中でも細かな点はモヤモヤがあった部分ですので、今回はこのProof of Workを少し深掘りして説明することで、モヤモヤを解消していこうと思います。

Proof of Workの辞書的定義

まず言葉の定義からしたいと思います。Bitcoin界の聖書、サトシナカモト論文では次のようにProof of Workを記載しています。

The proof-of-work involves scanning for a value...The proof-of-work (also) solves the problem of determining representation.

「Proof of Workはある値を探し出すという行為である。(中略)これにより、(分散型ネットワークで)一意に合意するという問題を解決する」(ざっくり訳)


ここでいう「一意に合意する」とは、「トランザクションを含んでいるブロック」を一意に確定させることを指しています。それでは、まず一意にブロックを確定させるアプローチの概要を説明し、その次に技術的にどのように実現しているか(ある値とは何か?どのように探し出すのか?)を確認していこうと思います。

Proof of Workの概要

まずはBitcoinの取引の流れを振り返り、そこから生じる疑問を解決することでProof of Workによって、どのようにブロックが確定するの確認していこうと思います。

Bitcoinの取引の流れ

まず、Bitcoinの取引の流れを簡単におさらいします。


最初にBitcoinの送金者は送金内容をネットワーク上にアナウンスします。アナウンスされた送金内容は各ノードで検証され、取引内容に問題がなければ各ノードで保存されます。非常に単純な仕組みですが、この仕組みだけでは二重送金の問題を解決できていません。


例えばAさんがBさんに対して1BTCを送金した後で、Aさんが同じコインを利用して、1BTCをCさんに送金したとします。このとき、各ノードとしてはA→Bの取引と、A→Cの取引のどちらを正当なものと扱うかを決めないといけません。ノードによって正当な取引が異なっていると、決済ネットワークとしての機能を果たせていないことになってしまいます。


アプローチとしてはいくつかありますが、まず一番に考えつくのは、最初に受信した取引を正当なものとして扱うというアプローチです。しかし、Bitcoinには中央集権のサーバはなく、分散ネットワーク上で各ノードが取引内容を検証するので、あるノードはA→Bの取引を正当なものとして扱い、別のノードはA→Cの取引を正当なものとして扱うという状態になってしまう可能性があります。


逆に、「受信したタイミングではなく、送金したタイミングを基準に正当性を確認すればよいのでは?」と考えることもできるかもしれませんが、送金時間は送金者が自由に変更できてしまうので、いつまでたっても取引が安全ではないことになってしまいます。


このように送金した時間や受信した時間など、「タイミング」を基準に取引の正当性を保証することは、分散型ネットワークでは難しいことがわかります。

ブロックチェーンとPoWによるトランザクションの確率的証明

そこで、Bitcoinでは「タイミング」を取引完了の基準に利用せず、「取引が台帳に含まれているかどうか」を基準とするというアプローチで解決しています。つまり、ブロックチェーンという各ノードが管理する台帳を作成し、その台帳に記載されている取引を正当なものとして扱う、というアプローチです。


もちろん、すぐに疑問がわいてくるかと思います。受信したタイミングを基準にしていたときと同じように、「どうやってブロックチェーンを全員同じ形で保有するんだ」という疑問です。ここで登場するのが、マイニングという概念です。冒頭で触れた「ある値を探し出す」という問題を解くことができたノードのブロックを正当なブロックとして定義することで、全員が同じブロックチェーンを参照できる仕組みにしています。この問題を解く一連の行為をマイニングと呼び、マイニングを行うノードをマイナーと呼んでいます。


これで一件落着しそうですが、もうひとつ問題が残っています。「問題を解くことができたブロックを正当なブロックとするアプローチ」では、ほぼ同じタイミングで問題を解くことができたノードが複数現れた場合に、各ノードはどちらのブロックをブロックチェーンにつないだらよいか判断できません。


もちろんこのことをBitcoinでは想定しており、各ノードはどちらのブロックも正当なものとしてブロックを取り扱い、保持することにしています。そして、一番長いブロックチェーンを正当なものとして定義しています(正確には累積Difficultyが最も大きなチェーン)。


以下の図を使って簡単に説明します。まず、最初に受け取ったブロック(ブロック3 (A))をブロックチェーンにつなぐとともに、2番目に受け取ったブロック (ブロック3 (B))はセカンダリチェーンという領域に格納されます (下図のInitial Condition)。

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各マイナーはどちらのブロックに対して次のブロックを繋ぐかを決定した上で、マイニングを実施します。仮にあるマイナーがセカンダリチェーンのブロックに対してマイニングを行って、一番最初にブロックを発掘したとします。マイナーはそのブロックをBitcoinネットワーク上に通知し、各ノードはそのブロックを検証した上で受け入れていきます。セカンダリチェーンに格納されていたブロックは、プライマリブロックチェーンに移動し、そのブロックに対してマイナーが発掘した新ブロックを繋ぎます。


このようにブロックチェーンは時に分岐し、プライマリブロックチェーンの入れ替えが起こることを許容した仕組みになっています。ブロックチェーンの分岐は過去のどの時点に対しても発生しうるので、Bitcoinは取引を100%は保証できない仕組みになっています。ただ、このことがBitcoinの欠点かというとそんなことはありません。ブロックの作成には次の章で説明するように計算量が必要になり、過去のブロックを変更してあるトランザクションをなかったことにすることは、そのトランザクションを含むブロックから現在のブロックに至るまでの計算量と同じだけの計算量を必要とします。そのため、ブロックが蓄積されるにつれて実質的に100%に近い確率でトランザクションを保証できます。


ナカモト論文内で確率的な証明がされていますが、例えばトランザクションを覆そうとする悪意を持った人がマイニングパワーの10%を保有している場合でも、5ブロック蓄積されれば0.01%の確率でしかそのトランザクションが覆されることはありません。

Proof of Workの技術的な実現方法

次にProof of Workの核となる、「Work」 とはどのようなものなのか、技術的な点も含めて確認していきます。


Bitcoinにおける「Work」のオリジナルな解説は、ナカモト論文でも参照している以下の論文で紹介されています。どのようなものかというと、「先頭N桁が0であるハッシュ値が見つかるまで、ブロックヘダー(ブロックの要約情報)に対してひたすらハッシュ値の計算を行うというものです。
http://www.hashcash.org/papers/hashcash.pdf


ブロックヘダーにはトランザクションを要約した情報(マークルツリー)、ハッシュ値の何桁目までが0である必要があるかを決定するDifficultyなどの情報とともに、Nonceとよばれる情報が保持されています。このNonceを変更しながらブロックヘダーに対してハッシュ計算を繰り返すことで、先頭N桁が0になるハッシュ値を探していきます。なお、桁数Nを決めるDifficultyは2016ブロックごとに計算し直され、約10分でNonceが発見されるように調整されます。


ハッシュ計算のイメージ
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このWorkには重要な特徴があり、最も早く先頭に0がN個並んだハッシュ値を見つける特殊な解法(アルゴリズム)があるわけではなく、ブルートフォース、つまり総当たりをするしかないという点です。これにより、アルゴリズムの優越ではなく、純粋に計算量の多寡に基づいてハッシュ値が発見されることになります。


また、ブロックに含めるトランザクションを変更することで、ブロックヘダー内のマークルルートの値は変化しますので、計算結果として必要なNonceは各マイナーによって異なります。これにより、基本的には計算量の多寡に基づきつつも、必ずしも計算量が多くはないマイナーでもブロックを発掘するチャンスがあります。例えば、計算量の多いマイナーAが取り込んだトランザクションをもとにして作成したブロックヘダーはNonceが1,000,000,000,000,000,000、マイナーBが取り込んだトランザクションをもとにして作成したブロックヘダーはNonceが10の場合、Nonce=0から順番にハッシュ値を検証していった場合は、マイナーBが(計算量にあまりにも差がある場合は負けるかもしれませんが)勝利することになります。


つまり、試行回数を多くすれば計算量の割合に応じて発掘できるブロック数が決まるものの、一回一回の試行では誰でも発掘できるチャンスがある仕組みになっています。ルーレットを続けていくと最終的には確率通りの割合で勝率が決まってきますが、一回一回の試行では2の黒とか3の赤とかどれが出るかはわからないのと同じです。


この計算には大量のメモリは不要で、純粋にコンピューティングパワーのみが必要になってくるので、一般にこのマイニングにはASICとよばれるハッシュ値の計算に特化したハードウェアが利用されます。ASICはハッシュ計算のスピードが圧倒的に早いため、一般のCPUやGPUを使用したPCではマイニングで勝利することはほとんど不可能と言われています。


一方、Ethereumなどで使用されているWorkは、計算に大量のメモリを必要とする仕組みにしています。そのため、ASICを利用したマイニングが原則できない仕組みになっています。思想的には、資本が少ない個人は資本投資ができないためマイニングによる利益を全く享受できない一方、資本の多い特定のマイナーのみが集中的にマイニング利益を得ることができるのは、富の偏りを産むとともに、特定のマイナーが取引の承認行為を支配することによりネットワークの安全性が低下するという発想があるようです。


ASICを利用できる場合の収益イメージ
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まとめ

トランザクションを含んでいるブロックは、マイナーたちによる何百万回ものハッシュ値の計算により作成(=発掘)されています。そのブロックを覆すためには、そのブロックから現在のブロックまでを計算したのと同じだけの量の計算量が必要となります。まとめると、この計算量によるブロックの正当性の保証のことをProof of Workとよび、これによりそのブロックに含まれるトランザクションが確率的に確定するという仕組みになっています。

ヘッジファンドによるMt Gox債権買取からBitcoin価格を予想してみる

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久々にみんな大好きMt Goxニュースです。


日米のヘッジファンド数社が、Mt Goxに対する債権保有者から債権額の4分の1で債権の買い取りを始めたようです。買い取りを始めたのは、Argo PartnersというNew Yorkに拠点を置くヘッジファンドなど4社で、破産、清算した会社に対する債権に対する投資をメインにしているヘッジファンドのようです。

FTの記事(会員登録が必要)
https://www.ft.com/content/821ae69a-f0d1-11e6-8758-6876151821a6
Coindeskの記事
http://www.coindesk.com/bitcoin-hedge-funds-reportedly-racing-buy-mt-gox-claims/

買い取り仲介サイト
MyGoxClaim.com – Help and information on selling your MtGox bankruptcy claim.


買い取りの内容

ヘッジファンド各社は各債権者が申し立てている債権額の15%の値段で、債権を現金で買い取ることを表明しているようです。「現金」、しかも「債権額の15%」で買い取るという点がポイントで、今のレート(1BTCあたり約1000ドル)を考慮すると、もしBitcoin建てで返還された場合は、ヘッジファンドは大きな利益を得ることができます。なお、債権額はMt. Goxが破産手続きを開始した際の市場価格である、438ドルで計算されています。


最終的に債権者にBitcoinで返金するか、現金で返金されるかは未だ決まっていませんが、ヘッジファンドとしてはBitcoin建てで返金されることを期待して賭けに出たわけです。喪失したBitcoin約85万BTC、そのうち現在回収できた(というか、主にウォレットに入っていたのに気づいた)Bitcoinの額は約20万BTC(202,185BTC、2016年9月21日時点)ですので、仮にBitcoin建てで返金されるとするとMt Gox破産時に保持していたBitcoinの4分の1(20万 / 85万 = 23.5%)はそれぞれの債権者に返還されることになります。


ただ、北米での事業をめぐってCoinLabなどからMt Goxは訴訟を受けており、この訴訟が完了するまでは債権者にBitcoinまたは現金が分配されることはありません。また、CoinLabが仮に勝訴して全額債権が認められた場合は、7,500万ドルがMt Goxに対する債権額として増えることになるため、ヘッジファンドの取り分は目減りします。


いずれにせよ、Mt Goxの債権者としては、現在のタイミングでヘッジファンドに売却して損失額を確定させるか、このままキープしてBitcoinを回収(もしくは現金回収)することに賭けるかという選択肢が生まれたわけです。

ヘッジファンドは儲かるの?

買い取る側のヘッジファンドですが、どれくらい儲かる想定で買い取りを始めたのでしょうか?いくつかのパターンに分けて、ヘッジファンドの取り分をシミュレーションしてみました。

前提
  • 2019年2月 (2年後) に債権者への分配が実施される
  • MtGox破産時のレート: 438ドル
  • 現在のレート: 1011ドル
  • ヘッジファンドは債権額の15%で現金買取
  • ヘッジファンドが買い取った債権額は100 BTC (= 43,800ドル)、買取額は6,570ドル (=43,800×15%)とする
  • ヘッジファンドの管理コストや資金調達コスト、税金などは無視する
パターン1 CoinLabの請求棄却 + BTCで債権者に分配

この場合、債権額 (BTC建て)の約25%が債権者に返還されることになります。上記前提で計算すると、6,570ドルの投資に対して、25,275ドルヘッジファンドの収益となります。収益性を図る指標である、IRR(内部収益率)を計算すると、IRRは96%となります。ヘッジファンドのIRRは良くても30%程度ですから、十分すぎる収益を手に入れることができます。
世界のPEファンドはどのくらいのIRRなのか?|王子の備忘録ブログ


パターン2 CoinLabの請求棄却 + 現金で債権者に分配

パターン1との違いは現金建てで債権者に債権額が返還されることになる点です。このとき、債権額はMtGox破産時のレート(1BTC=438ドル)で計算されることが予想されますので、パターン1よりも収益が悪化します。ただし、Bitcoin価格がMt Gox破産時の倍以上に高騰しているので、Bitcoin建てでは25%の返金だったのが、日本円建て(もしくはドル建てで)で計算すると債権額の約50%が返金されることとなります。


結果として、21,940ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは83%となります。


パターン3 CoinLabの請求容認 + BTCで債権者に分配

この場合、7500万ドル分を破産財団から差し引いた上で、ユーザの取り分を計算する必要が有ります。本来は7500万ドル全額が破産財団から引かれるのではなく、通常の債権同様Mt Goxに対する全ユーザの債権総額に対して債権額を按分した割合分だけ引くのかもしれませんが、破産法の規定がよくわからないので、一旦7500万ドル全額が優先して回収されてしまう前提で計算しています。


計算すると、15,244ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは52%となります。


パターン4 CoinLabの請求容認 + 現金で債権者に分配

計算すると、14,043ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは46%となります。


現在のレートを前提にすると、どの想定パターンでもヘッジファンドは大儲けできそうです。
ちなみに、パターン1「CoinLabの請求棄却+BTCで債権者に分配」パターンの場合は、2022年までにBTCで支払いが行われれば、現在のレートであればIRR30%を維持できそうです。一番収益性の悪いパターン4であったとしても、2020年中頃までに支払われればIRR30%を維持できそう。

価格の予想とまとめ

ヘッジファンドめちゃくちゃ儲かるやん」と思ってしまいそうですが、ここまでの話はBitcoin価格が今現在の水準をキープするという前提での話でした。例えばBitcoin価格が500ドルになるという前提で計算をすると、パターン3とパターン4では赤字になってしまいます。


個人的には裁判でCoinLab側の主張が認められることは見込み薄なんじゃないかと思っているので、パターン3と4を除いた最悪パターンである、パターン2でギリギリ黒字を保てるラインを調べてみると、約300ドルとなります (IRR≒0%)。実際には、資金調達コスト、人件費などがあるため、IRR=5%を最低ラインとすると、パターン2での採算ラインは380ドル近辺になります。このあたりの値段がヘッジファンドが考える今後数年での最低ラインかなと予想してみます。


冒頭のFTの記事ではBitcoin建てでの返金にヘッジファンドがギャンブルしたとしていましたが、返金方法はあまり大きな差ではなく、どちらかというと「債権額の返還までの期間」、「Bitcoin価格」、「裁判の行方」に賭けているといえそうです。いずれも予想が難しそうな変数なので、ギャンブルには違いありませんね。

怪しいアルトコインを見分ける3カ条

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あるアルトコインがBitcoinとどのような点が異なるかを測定する尺度として、Mastering Bitcoinの中では以下の3項目が紹介されていました。

  1. マネタリーポリシー
  2. コンセンサスメカニズム
  3. 特有の機能(匿名化、Ethereumなどのプログラム実行プラットフォームなど)


本の中では、これらの要素が並列なものとして記載されていますが、各要素とマーケット評価との関係には差があるかと思います。有名なアルトコインの特徴とその現状を確認していくことで、どの要素がマーケット評価に直結するかを確認していこうと思います。なお、統計的な分析は全くしていないです笑

Mastering Bitcoin

Mastering Bitcoin

そもそもアルトコインってなんだ?

アルトコインとは、Bitcoin以外の暗号通貨のことを指します。暗号通貨はBitcoinの発明により登場した分散型の通貨のことですが、今ではBitcoinだけではなく500種類以上の通貨が開発されています。有名どころでいうと、Bitcoinと瓜二つのLitecoinやCoinの送金以外の機能を付与したEthereum、NEMなどがあげられます。


2016年末時点でのアルトコインの時価総額ランキング
cryptocoin.hatenablog.com


BitcoinやLitecoinのソースコードは公開されており、それをもとにして誰でも新規にアルトコインを開発することができるので、魑魅魍魎がはびこる怪しげな世界になっています。


マネタリーポリシー

それでは、個々のアルトコインを特徴付けるポイントを一つずつ見ていきたいと思います。まずはマネタリーポリシーから。


マネタリーポリシーとは、通貨価値が次第に上昇していくデフレ型に設計されているか、あるいは次第に通貨価値が下落していくインフレ型に設計されているかという通貨供給面での特徴を指します。これは主にコインを発行するタイミングや発行量に依存して決まります。BitcoinやLitecoinは2100万BTC (8400万LTC) が上限に定められておりデフレ型に設計されている一方、Ethereum(時価総額2位)やMonero(時価総額5位)のように発行上限が定められていないインフレ型通貨(または非デフレ型)もあります。

Bitcoinの供給イメージ
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Ethereumの供給イメージ
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Ethereumは時価総額が暗号通貨界で2位と主要なポジションを占めていますが、その評価の理由は分散型のプログラム実行基盤としての役割であり、マネタリーポリシーがBitcoinと異なるからという理由ではありません。また、Ethereum同様にインフレ型で設計されていたFreicoinは、一時高騰したものの、今では時価総額9BTCとほとんど価値がない通貨になってしまいました。
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逆にこれといった特徴がないコインはデフレ型で設計すればうまくいくのかというと、暗号通貨上位ランキングに顔を出している通貨はBitcoinの機能以外の何かしらの特徴があるのが現実。デフレ型で設計しても、Bitcoinと同じものが出来上がるだけなので、当然といえば当然です。


唯一の例外は、Litecoin (時価総額4位)でしょうか。LitecoinとBitcoinの違いは、Litecoinの通貨供給量Bitcoinの約4倍である点と、PoWアルゴリズムにScriptを使用している点ですが、このことがLitecoinを現在の地位に押し上げているとは言い難いでしょう。


Litecoinは「Bitcoinの2番手コインとして、発行タイミングが良かったという偶然」と、「SegWitをBitcoinに先駆けて実装することが期待されるなど、実際に動くBitcoinのテストネットとしての役割」という2点が、今のLitecoinのポジションを築いている理由かと思います。

コンセンサスメカニズム

Bitcoinではどの取引が正当なものであるかを判別するために、PoW (Proof of Work)という仕組みが用いられています。これは取引が記録される台帳( =ブロックチェーン)に取引内容を書き込む人を、「計算量が多い問題を最初に解くことができた人」と定義することで、台帳の二重更新を防止しようという試みです。ブロックチェーンに書き込む人が一意に決まりさえすればいいので、Bitcoin以外のコインではPoWではなく、PoS (Proof of Stake)やPoI (Proof of Importance)といった別のコンセンサスメカニズムを採用している通貨も存在します。


Mastering BitcoinではPeercoin (時価総額30位)やBlackcoin (時価総額50位)などをコンセンサスメカニズムの独自性の例として紹介していますが、いずれも暗号通貨界で重要なポジションを占めているとは言いがたい状況です。ここまで見てきた通り、マネタリーポリシーやコンセンサスメカニズムは確かにBitcoinとの違いを特色づけるものではありますが、マーケットからの評価とは直結しないことがわかるかと思います。

特有の機能

結局あるアルトコインがマーケットから承認されるかどうかは、この点にかかってきます。
Bitcoin上で実現できていない機能や、実現できているけどBitcoin仕様の制約がある機能を実装しているアルトコインは、やはり注目を浴びやすくなります。現在暗号通貨上位を占めている通貨は、主に以下のいずれかの仕組みをマーケットから評価されているようです。

匿名化

このカテゴリーには、Monero(時価総額5位)、Dash (時価総額6位)、Zcash(時価総額13位)などが当てはまります。


匿名化というと、Bitcoinが匿名だという印象の方もいるかもしれませんが、Bitcoinは全取引履歴がブロックチェーン上に完全に公開されているため、世間での印象とは異なり透明性が非常に高い設計になっています。ただ匿名で通貨のやりとりをしたいという需要も強く、Bitcoin上にアドオンする形でZerocoinという匿名化の仕組みが開発され、そのZerocoinから派生する形でMoneroやZcashといった新しい暗号通貨が生まれてきました。

Zcoin and Zcash: Similarities and Differences - ZCoin Blog

しかし、各国の捜査当局からすると、マネーロンダリングや違法薬物などの取引に使用されるおそれがあるため、これらの匿名型通貨に対する規制を強化するのではないかという見方もあります。実際、MoneroはAlphaBayと呼ばれる世界最大級のオンラインダークマーケットで使用されています。
btcnews.jp


先日もFBIがMoneroに対して懸念を表明するなど、Moneroを利用した違法取引の摘発に向けて動きが加速することが予想されます。日本でも暗号通貨の規制法(資金決済法の改正)が今年施行される予定で、その際にMoneroやZcashのような匿名コインが認可されるかはひとつの注目ポイントだといえそうです。
www.coindesk.com

プラットフォーム

Bitcoinにない、あるいは大きな制限が加わっている機能を実現する通貨が、このカテゴリーに入ります。たとえばEthereumでは、Bitcoinでは実現できないチューリング完全(ループ処理や分岐処理など、プログラムに必要な要素がすべて含まれた状態)なプログラムを分散ネットワーク上で実現するための仕組みが備わっています。チューリング完全な仕組みにすると、無限ループなどをプログラムに組み込むことで、簡単にネットワークをダウンさせるような攻撃ができてしまいそうですが、プログラム実行にgasというお金を必要とすることで、そのような攻撃を防いでいます。


また、NEMでは最近Twitterで話題になったとおり、NEMにアドオンする形で任意のファイルにタイムスタンプを付与できるApostilleと呼ばれるウォレット機能が実装されています。この機能はBitcoin上にColored Coinをアドインして所有権の存在証明をしようとした試みと似ていますが、NEMには「Mosaic」と「メッセージ送信」という2つの機能が実装されているため、Bitcoinよりも容易にColored Coinに似た機能を実装することが可能になっています(ぶっちゃけまだよくわかっていないのは秘密)。

NEMアポスティーユのホワイトペーパー日本語訳 - クリプトストリーム

また、変わり種として、Steem(時価総額9位)のようにSNSへの貢献度によって報酬をもらえるようなコインもあります。
www.jpbitcoinblog.info

まとめ

マネタリーポリシーやコンセンサスアルゴリズム自体は、技術的には面白いところですが、マーケットからするとそれは各アルトコインの本質ではなく、末梢に過ぎないということでしょうね。


ということで、新しい怪しげなコインを見つけた時は、本当にそのコインが他のアルトコインと異なる価値を提供できそうかを慎重に検討する必要があります。「PoWと違い環境に優しいマイニングアルゴリズム」とかはどうでもいいんじゃ!流行るコインはわかりませんが、マネタリーポリシーとコンセンサスアルゴリズムの新規性のみを押すアルトコインは無視でよしですね(ただ一番危険な奴は、特有の機能があるように見せかけて、実は実現可能性が全くなかったりするやつですが)。

2016年年末時点の時価総額ランキング
cryptocoin.hatenablog.com


本当は100コインくらいを対象に、もっと細かな要素を加味してガリガリ分析したいところですが、データセットを作るところに手間取りギブアップ。。。

PBoCによるBitcoin規制の動きまとめ

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中国の大手取引所のOKCoin、HuobiがBitcoin、Litecoinの引き出し停止を発表したことを受けて、Bitcoin、Litecoinの価格が急落しています。

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ビットコインチャート・相場・価格/Bitcoinの【bitFlyer】

 

Bitcoinに関しては1000ドル台中頃だったのが、一時900ドル台前半になるなど、波乱の展開でした。原因となった中国の取引所の動きですが、2017年に入ってからPBoC(中国人民銀行)の介入の動きが激しくなったことへの対応になります。

 

後から状況を振り返ることができるように、1月から今月にかけてのPBoCの動きと、それに関するニュース記事をまとめておきます。なお、日付については数日間違っている可能性もあるのでご参考までに。また、この記事は適宜アップデートしていこうと思います。

 

PBoCの動き

1月5日(木)

PBoCの担当者が、中国の主要Bitcoin取引所関係者と会合。当局は取引所に対して、「法と規制に従う」ことを求めました。このとき会議に参加した取引所は、大手三大取引所であるBTCC、OKCoin、Huobiです。

 

この発表を受けて年初から上り調子だったBitcoinの価格は、1000ドルを割ってしばらく低迷期に入ります。

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https://jp.investing.com/currencies/btc-usd

China's Central Bank Issues Warnings to Major Bitcoin Exchanges - CoinDesk

 

1月11日(月)

PBoCが中国の3大取引所(BTCC、OKCoin、Huobi)に対して、立ち入り検査を行うことを発表しました。

China's Central Bank to Conduct Ongoing Bitcoin Exchange Visits - CoinDesk

 

1月13日(水)

BTCC、OKCoin、Huobiが信用取引を停止したことを発表しました。これまで中国の取引所は信用取引と取引手数料無料を武器に取引量を拡大していましたが、これを機に取引量を大きく減らしていくこととなります。

Chinese Exchanges Curb Bitcoin Margin Trading | Bitcoin Magazine

 

1月24日(火)

BTCC、OKCoin、HuobiはBitcoinとLitecoinの取引について、0.2%の取引手数料を導入しました。

China's Bitcoin Exchanges End No-Fee Trading in Market Shake-Up - CoinDesk

 

この影響で、三大取引所にこれまではいってこなかった、BTC100とCHBTCがそれぞれ取引量の1位と2位に躍り出ました。

Bitcoin Volume is On the Move to New No-Fee Exchanges - CoinDesk

 

2月3日(金)

Bitcoin価格が1000ドルを回復しました。

Bullish Sentiment Fuels Bitcoin's Return to $1,000 - CoinDesk

 

2月8日(水)

PBoCが1月5日に開かれた主要Bitcoin取引所との会合に含まれていなかった小規模な取引業者と会合を開きました。会合に出席した取引所は、以下の9取引所です。

  • BTC Trade
  • Yunbi
  • HaoBTC
  • CHBTC
  • BTC100
  • BitBays
  • Yuanbao
  • Dahonghuo
  • Jubi 

この会合後、多くの取引所は取引手数料を導入することを発表しました。ただし、YuanbaoとBitBaysはPBoCの規制強化に対して、懸念を表明しています。

 

また、この会合の中で、マネーロンダリングが議題に上ったことが報じられています。なお、この日の会議には3大取引所(BTCC、OKCoin、Huobi)は含まれていなかった模様です。

China's Central Bank Meets With More Bitcoin Exchanges - CoinDesk

 

2月9日(木)

PBoCが中国の取引所に対して、マネーロンダリング対策を要求しました。これは前日2月8日の会合を受けたものです。

China's Central Bank Issues New Warning to Bitcoin Exchanges - CoinDesk

 

このPBoCの発表後、中国大手取引所のOKCoin、HuobiがBitcoinとLitecoinの引き出しを一ヶ月間停止することを発表。なお、中国元の引き出しやその他サービスは引き続き継続するとのことです。ちなみに引き出しを停止する目的は、PBoCから要求されたマネーロンダリング対策の実装のためとのこと。

 

残る大手取引所のBTCCも声明を出して、マネーロンダリング対策のために内部システムをアップグレードすることを発表しました。影響はOKCoinやHuobiほどではなく、BitcoinとLitecoinの引き出し時間が72時間になる程度にとどまるとのことです。

Two of China's Biggest Exchanges Stop Bitcoin Withdrawals - CoinDesk

 

2月14日(火)

PBoC前理事がCCTVのインタビューで「Bitcoinをなくすことは不可能」 と発言しました。PBoCへの牽制とも捉えられるので、今後のPBoCの動きが注目されます。

 

2月17日(金)

中国の取引所やブロックチェーン業界の自主規制に関するセミナーが北京で開かれました。PBoC前副理事、北京の金融当局者などが出席し、AMLなどについて話し合いが行われたようです。

 

PBoCはこれまで規制を強めていましたが、ここに来て前理事や前副理事などがソフトランディングさせようとする動きを見せているように思えますね。

 

まとめ

市場価格が1000ドルを超えて、PBoC側の対応が注目されていた中で発表されたのが、本日の大手取引所のBitcoin引出停止でした。今のところ、1000ドルは割っているものの1月6日のPBoCと大手取引所の面談ほどのインパクトは出ていないようです。

 

2月9日発表の効果があまりないとなると、PBoCとしてはもう一段規制を強めてくるかもしれません。

 

中国の動き(規制前)については、こちらもどうぞ。 

cryptocoin.hatenablog.com