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Bitcoinの経済学 需給関係の整理と2017年のBitcoin価格の予測

去年はBitcoinの価格が大きく上昇した年となりました。今年価格がどう変化するかを占う上で、Bitcoinの価格形成のメカニズムを整理しておくことは非常に重要です。

cryptocoin.hatenablog.com

 

今回は、Bitcoin価格に影響を与える需給関係を整理するとともに、それを踏まえて今年のBitcoin価格の上昇/下落を予想します。

 

Bitcoinの価格形成その前に 価格決定メカニズムのおさらい

中学校や高校の授業で習う内容かとは思いますが、経済学的に価格がどのようなプロセスで決定されるかを再確認しておきます。

 

経済学的にはモノの価格はそのモノに対する「需要」と「供給」のバランスで決定されます。例えば、Bitcoinに対する「需要」が上昇すればBitcoinの価格も上昇しますし、逆にBitcoinに対する「供給」が減少すれば、同様にそのモノの価格は上昇します。また、一般的に需要が上昇すればそれに合わせて供給量も増大します(逆もしかり)。

 

ただし、需要の増加に伴う供給量の動きはモノによって異なります。例えば、金を例に考えると、仮に工業製品で使用するための需要が急増したとしても、採掘量はほぼ一定量であるため供給量が増えることはありません。

 

それでは、Bitcoinに関する価格決定に関するメカニズムを確認するために、Bitcoinの需要と供給が何から成り立っているのかと、どのように調整されるかを確認していきます。

 

Bitcoinの価格形成メカニズム 供給

まずは供給から構造を確認していきます。なお、供給メカニズムについては一橋大学経済研究所の論文を参考にしています。

 

Bitcoinの供給量はシステム的に事前定義されています。具体的には、最大の供給量が2100万枚と定められており、マイナーによる採掘(トランザクションの承認行為)のたびに一定量のコインが採掘に成功したマイナーに支払われるという形態をとっています。通常のモノであれば、需要が増えれば工場で生産するなどして供給量を増やすのに対して、Bitcoinの供給量は需要に対して決まるのではなく、一定のアルゴリズムのもとで定期的(離散的)に増加していくことになります。

 

このことを、経済学的には需要量の変動に対して、供給曲線の価格弾力性が0であるといいます。供給曲線の価格弾力性が0の場合、価格のボラティリティ(変動量)が高くとなるという性質があります。下の図(上記論文 Figure3)で言うと、需要曲線(図D)がいかに変化したとしても、供給曲線(図S)は一定であるため、供給量(図L)が変化することはなく、価格(図P)で需要の増加分を吸収していることがわかります。

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通常のモノであれば需要の増加とともに供給量も増加するため、価格が大きく跳ね上がることが防がれますが、Bitcoinの場合は供給量が需要に応じて増加することはないため、需要増加のインパクトを価格のみで賄う必要があります。これは逆もしかりで、需要量が減少した場合は、Bitcoinの供給量を削減するということはできないため、価格が大きく下がることが予想されます。

 

このため、供給という側面から見ると、Bitcoinは需要が伸びている現在は大きく価格が上昇する可能性が高いが、他のCoinなどの代替物の登場や、法的規制によるBitcoinからの逃避が起こった途端に価格が急落するリスクをはらんでいると言えます。

 

よく供給量が決まっているため急激なインフレによる価値の希薄化が発生しないといわれるBitcoinですが、供給量が事前定義されているのは価格の暴落を防げない、諸刃の剣でもあるということです。

 

Bitcoinの価格形成メカニズム 需要

需要面では「誰が」Bitcoinを購入しているかを確認することが重要です。

 

誰が主に取引している?

「誰が」ということで重要になるのは、中国の存在です。Bitcoinの過去2年分の取引では中国の3取引所で全取引量の94%を占めており、中国でのBitcoinの需要がBitcoin価格に大きな影響を与えることがわかります。

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Bitcoinity.org

 

中国元の価格は市場ではなく、政府により統制されており、現在では世界で最も過大評価されている通貨であるとの声もあります。過大評価されているということは、価格下落の恐れがあるということであり、中国元の価格下落リスクを回避するために、中国からのマネーがBitcoinにさらに流れ込む可能性が高いと思われます。中国元の価格推移については、以下のニッセイ基礎研究所の分析でも同様の分析がなされています。

www.nli-research.co.jp

 

さらに、今年アメリカが利上げに踏み切った場合は、相対的に米ドルの魅力が上がることになるため、人民元の価格下落がさらに現実味を帯びるかと思われます。

 

中国政府の動きは?

2017年初頭に中国政府は、Bitcoin人民元の流出につながっている疑いがあるため今後調査を実施すると述べ、政府による介入を示唆しました。これに対して、中国の大手取引所である、BTC Chinaやokcoinなどは政府による規制強化を支持するとの声明を出しています。

www.coindesk.com

 

このため、一時的にはBitcoinの価格が下落することが想定され、事実一時14万円台をつけたBitcoinの価格は、1月21日現在10万円台まで下落しています。ただ、米ドル利上げ時には、規制を強化したとしても人民元からの逃避が進むことはさけられないことが予想されます。米ドル利上げ時にBitcoin価格がどこまで上昇するかは注目する必要があるでしょう。

 

1月22日追記

中国政府の規制強化に伴い、中国の3大取引所がレバレッジ取引を中止するとともに、取引手数料を徴収するようです。こうなってくると、取引量が急減する可能性もあるうえ、これ以上の規制強化を恐れて金ETFなどの別資産が逃避先として選ばれる可能性が高くなりました。 

cryptocoin.hatenablog.com

 

まとめ

本当は需要の箇所には中国以外の要因も書きたかったのですが、分析していくと予想以上に中国の影響が大きいことがわかったため、中国の動きに絞って分析しました。Bitcoin価格が爆進した2016年でしたが、2017年も需要の側面から主に米ドル利上げのタイミングで価格が伸びていくと思われます。

 

ちなみに供給の箇所で紹介した一橋大学経済研究所の論文は、供給曲線以外についても価格の変動が大きくなる要因をあげていて面白い内容であるため、そのうちこのブログでも紹介しようと思います。