25歳海外駐在員の暗号通貨ルポ

25歳海外駐在員の暗号通貨ルポ

25歳の東南アジア某国に居住する駐在員。Bitcoinなどの暗号通貨をメインに、英語や駐在生活に関して情報発信中。

ヘッジファンドによるMt Gox債権買取からBitcoin価格を予想してみる

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久々にみんな大好きMt Goxニュースです。


日米のヘッジファンド数社が、Mt Goxに対する債権保有者から債権額の4分の1で債権の買い取りを始めたようです。買い取りを始めたのは、Argo PartnersというNew Yorkに拠点を置くヘッジファンドなど4社で、破産、清算した会社に対する債権に対する投資をメインにしているヘッジファンドのようです。

FTの記事(会員登録が必要)
https://www.ft.com/content/821ae69a-f0d1-11e6-8758-6876151821a6
Coindeskの記事
http://www.coindesk.com/bitcoin-hedge-funds-reportedly-racing-buy-mt-gox-claims/

買い取り仲介サイト
MyGoxClaim.com – Help and information on selling your MtGox bankruptcy claim.


買い取りの内容

ヘッジファンド各社は各債権者が申し立てている債権額の15%の値段で、債権を現金で買い取ることを表明しているようです。「現金」、しかも「債権額の15%」で買い取るという点がポイントで、今のレート(1BTCあたり約1000ドル)を考慮すると、もしBitcoin建てで返還された場合は、ヘッジファンドは大きな利益を得ることができます。なお、債権額はMt. Goxが破産手続きを開始した際の市場価格である、438ドルで計算されています。


最終的に債権者にBitcoinで返金するか、現金で返金されるかは未だ決まっていませんが、ヘッジファンドとしてはBitcoin建てで返金されることを期待して賭けに出たわけです。喪失したBitcoin約85万BTC、そのうち現在回収できた(というか、主にウォレットに入っていたのに気づいた)Bitcoinの額は約20万BTC(202,185BTC、2016年9月21日時点)ですので、仮にBitcoin建てで返金されるとするとMt Gox破産時に保持していたBitcoinの4分の1(20万 / 85万 = 23.5%)はそれぞれの債権者に返還されることになります。


ただ、北米での事業をめぐってCoinLabなどからMt Goxは訴訟を受けており、この訴訟が完了するまでは債権者にBitcoinまたは現金が分配されることはありません。また、CoinLabが仮に勝訴して全額債権が認められた場合は、7,500万ドルがMt Goxに対する債権額として増えることになるため、ヘッジファンドの取り分は目減りします。


いずれにせよ、Mt Goxの債権者としては、現在のタイミングでヘッジファンドに売却して損失額を確定させるか、このままキープしてBitcoinを回収(もしくは現金回収)することに賭けるかという選択肢が生まれたわけです。

ヘッジファンドは儲かるの?

買い取る側のヘッジファンドですが、どれくらい儲かる想定で買い取りを始めたのでしょうか?いくつかのパターンに分けて、ヘッジファンドの取り分をシミュレーションしてみました。

前提
  • 2019年2月 (2年後) に債権者への分配が実施される
  • MtGox破産時のレート: 438ドル
  • 現在のレート: 1011ドル
  • ヘッジファンドは債権額の15%で現金買取
  • ヘッジファンドが買い取った債権額は100 BTC (= 43,800ドル)、買取額は6,570ドル (=43,800×15%)とする
  • ヘッジファンドの管理コストや資金調達コスト、税金などは無視する
パターン1 CoinLabの請求棄却 + BTCで債権者に分配

この場合、債権額 (BTC建て)の約25%が債権者に返還されることになります。上記前提で計算すると、6,570ドルの投資に対して、25,275ドルヘッジファンドの収益となります。収益性を図る指標である、IRR(内部収益率)を計算すると、IRRは96%となります。ヘッジファンドのIRRは良くても30%程度ですから、十分すぎる収益を手に入れることができます。
世界のPEファンドはどのくらいのIRRなのか?|王子の備忘録ブログ


パターン2 CoinLabの請求棄却 + 現金で債権者に分配

パターン1との違いは現金建てで債権者に債権額が返還されることになる点です。このとき、債権額はMtGox破産時のレート(1BTC=438ドル)で計算されることが予想されますので、パターン1よりも収益が悪化します。ただし、Bitcoin価格がMt Gox破産時の倍以上に高騰しているので、Bitcoin建てでは25%の返金だったのが、日本円建て(もしくはドル建てで)で計算すると債権額の約50%が返金されることとなります。


結果として、21,940ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは83%となります。


パターン3 CoinLabの請求容認 + BTCで債権者に分配

この場合、7500万ドル分を破産財団から差し引いた上で、ユーザの取り分を計算する必要が有ります。本来は7500万ドル全額が破産財団から引かれるのではなく、通常の債権同様Mt Goxに対する全ユーザの債権総額に対して債権額を按分した割合分だけ引くのかもしれませんが、破産法の規定がよくわからないので、一旦7500万ドル全額が優先して回収されてしまう前提で計算しています。


計算すると、15,244ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは52%となります。


パターン4 CoinLabの請求容認 + 現金で債権者に分配

計算すると、14,043ドルヘッジファンドの収益となり、IRRは46%となります。


現在のレートを前提にすると、どの想定パターンでもヘッジファンドは大儲けできそうです。
ちなみに、パターン1「CoinLabの請求棄却+BTCで債権者に分配」パターンの場合は、2022年までにBTCで支払いが行われれば、現在のレートであればIRR30%を維持できそうです。一番収益性の悪いパターン4であったとしても、2020年中頃までに支払われればIRR30%を維持できそう。

価格の予想とまとめ

ヘッジファンドめちゃくちゃ儲かるやん」と思ってしまいそうですが、ここまでの話はBitcoin価格が今現在の水準をキープするという前提での話でした。例えばBitcoin価格が500ドルになるという前提で計算をすると、パターン3とパターン4では赤字になってしまいます。


個人的には裁判でCoinLab側の主張が認められることは見込み薄なんじゃないかと思っているので、パターン3と4を除いた最悪パターンである、パターン2でギリギリ黒字を保てるラインを調べてみると、約300ドルとなります (IRR≒0%)。実際には、資金調達コスト、人件費などがあるため、IRR=5%を最低ラインとすると、パターン2での採算ラインは380ドル近辺になります。このあたりの値段がヘッジファンドが考える今後数年での最低ラインかなと予想してみます。


冒頭のFTの記事ではBitcoin建てでの返金にヘッジファンドがギャンブルしたとしていましたが、返金方法はあまり大きな差ではなく、どちらかというと「債権額の返還までの期間」、「Bitcoin価格」、「裁判の行方」に賭けているといえそうです。いずれも予想が難しそうな変数なので、ギャンブルには違いありませんね。