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VALUとZaifトークンは無価値である

8月27日 (日)、Zaifトークンが突如2.5円まで急騰したかと思いきや、そのまま0.4円台まで急落し、一部のトークン保有者が「補償しろ」、「ロールバックしろ」というコメントをZaifに向けて浴びせる阿鼻叫喚な光景が広がっています。

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(現在は1円付近まで回復した模様)


もともとは、「Zaifを運営するテックビューロがICOを発表したCOMSA」と「Zaifトークン」が連携することへの期待という、投資するには非常に弱い根拠を元に、Zaifトークンは買い上げられていました (+イケハヤ、Zaifチャットなどの煽り)。そのような状況で、Zaif側から「COMSAとの連携予定はない」との発表があり、根拠としていた前提が崩れて価格が急落したという状況です。


この一連の流れについて、市場操作だと言ってZaifを責める声もありますが、トークンで損した人はただの噂をベースに買い上げて損しただけであり、自己責任であると言えるでしょう。


さて、そもそもこのZaifトークンですが、このトークン自体に今現在裏付けとなる価値は何一つありません。最近話題のVALUについても当てはまりますが、このトークンを買ったからといって何か特別な権利を得られるわけではなく、ただのトークンというデジタルアセットを手に入れたにすぎません。株式やBitcoinと比較することで、この点はさらに明確になるかと思います。

株式との比較

株式の場合は企業が生み出した利益剰余金から、「配当」を受け取る権利が会社法で保証されています。もちろん、株主総会決議で利益剰余金を配当に回さないという決定を下すことはできますが、あくまでも最終的に配当を決めるのは株主です (取締役会設置会社の場合は取締役会の決議事項ですが、取締役の選任は最終的には株主が決定しているため、株主の意向に逆らって配当を拒否することは完全にはできません)。


一方、VALUやZaifトークンには、VALU発行者やテックビューロの生み出した利益から配当を受け取る権利は当然ありません。


また、株価は理論的には将来の配当を現在価値に割り戻したものとされています。このように株式には価格が生まれる根拠がありますが、VALUやZaifトークンの場合は将来的に何かしらのお金をもらえることが一切保証されていないため、価格が0円以上になる根拠がありません (VALUの場合、トークン発行者が何かしらの「優待」を提示する場合もあるので、その分は価格として織り込まれる余地はあります)。


さらに、株式のもう一つの機能として、会社の方針に口を出す権利が会社法で認められています。これは、株主総会での議決権であったり、株主総会での議題の提出権であったり様々ですが、いずれも会社法で法律として認められています。当然ですが、ValuやZaifトークンにはこのように会社の経営に口を出す権利は一切認められていません。


ここで、会計上トークンをどのように位置付けられるか考えてみましょう。ValuやZaifトークンの配布時の仕訳は、以下のようになるかと思います。


トークン配布時
現金 (資産) 100 / トークン発行益 (収益) 100

一方、株式の新規発行を考えると、以下の仕訳になります。

新規株式発行時
現金 (資産) 100 / 資本金 (資本) 100


一見同じように見えますがそこには大きな違いがあり、トークン発行益は損益計算書上の売上である一方、株式の場合は貸借対照表上の資本の増加になります。会社から見ると、株式の場合はこれから実施する事業のための資金調達の手段として株式を発行したということになりますが、トークンの場合は稼ぐための一手段でしかないということになります。


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上の図でわかるように、この稼ぎは最終的に純利益となって、貸借対照表上の利益剰余金に計上され株主への配当原資となります。つまるところ、トークン発行はトークン保有者を利するものではなく、株主を利するためのものに過ぎません。もちろん、このトークンがその価格に見合ったサービスを提供してくれるのであれば意味のあるものですが、一切の見返りがない以上、トークンとしての価値はゼロであると言えるでしょう。

Bitcoinとの比較

Bitcoinの根元価値が何かという点は議論が絶えませんが、一つの特徴として中央管理者が不在で、分散型で運営されているということがあげられるかと思います。分散型という仕組みにより、特定の人・団体が恣意的にBitcoinの仕組みをゆがめたり、不正を働くことができづらい仕組みになっています。


この点は現在の法定通貨 (Fiat)とは大きく異なる点であり、既存の政府の貨幣政策を信用できない人からすると、資金の退避先として都合がよい仕組みになっています。


一方、Valuやトークンの場合は、特定の発行主体が存在します。Zaifトークンの場合はZaifですし、VALUの場合はイケハヤや最近炎上したYouTuberのヒカルであったりするわけです。法定通貨の場合は貨幣供給量を自由にコントロールできるため、インフレにより貨幣価値が希薄化されることが多々あります。特定の発行体が存在するということは、法定通貨と同様の価格操作が簡単にできてしまうということを意味します。

まとめ

以上のように、VALU、Zaifトークンともに株式のように配当や経営権を約束されたものではなく、またBitcoinのような分散型の仕組みでもないことが分かるかと思います。


今回の騒動は、何かしらの商品を買うときは、その裏にある本当の価値とは何かを意識しないと、自らの資産を溶かすことになるいい教訓かと思います。また、このようなトークンがここまで買い上げられたのは、これまでの限られた人だけが参戦していた暗号通貨界隈から、一部のマス層に開かれはじめた証拠と言えるかもしれません。


ICOトークンの問題点はこちらの動画にもまとまっています

コイナーぼやき部屋Ep4(10/3/2017) 反省会の反省、TB社とCF社の亀裂とICOの問題点、市場規模に騙されるな