25歳海外駐在員の暗号通貨ルポ

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25歳海外駐在員の暗号通貨ルポ

25歳の東南アジア某国に居住する駐在員。Bitcoinなどの暗号通貨をメインに、英語や駐在生活に関して情報発信中。

Bitcoinは民主的?Bitcoinのガバナンスの危険性

Bitcoinは民主的な通貨であるとよばれていますが、本当にそうなのでしょうか。そもそも、民主的とはどのようなことを指して言っているのでしょうか。ニュースサイトなどを見ると、あまり深く考えずに「民主的」というワードを使用してしまっている気がしてなりません。

今回は「民主的な通貨」という意味について考えてみます。

 

まずはよく言われる「民主的」という意味から

そもそも「民主的」とはなんなのかという話をすると、Wikipediaによれば社会の構成員全員が権力を保持し、意思決定が合議により実現される社会形態をいうとのこと。

民主主義 - Wikipedia

 

これをBitcoinの世界に当てはめると、Bitcoin世界の構成員が皆権力を保持していて、意思決定に参加できるかどうかが民主的というためには考えなくてはならないポイントと言えそうです。

 

Bitcoin世界の構成員の権力状況

権力を保持しているということの定義は難しいですが、ここではBitcoinの世界に何かしらの変更を加える際に、意思決定に参加できることを権力を保持していることの定義としたいと思います。さて、権力の行方をさぐるためには、どのような構成員がいて、その構成員がどのように意思決定に参加しているかを分析する必要があります。

 

Bitcoinの構成員

Bitcoinの構成員が誰かと考えると、大きく2種類の人たちにわけられます。一つはBitcoinの利用者。ここにはBitcoinをただ利用するだけのLightweight Node(通常の利用者)から、マイナーのブロックの検証なども行うFull Node、そして採掘を行うマイナーが含まれます。もう一つはBitcoinの開発者。Bitcoinオープンソースソフトウェアの一つであるため、もちろん開発者グループが存在しています。

 

Bitcoinの変更プロセス

まず、誰かしらがBitcoinの仕組み変更の提案(Pull Request)をして、それを開発者グループのコアメンバーと呼ばれる人が承認(Merge)し、マイナーがその仕組みを受け入れることで仕組みの変更が行われます。仕組み変更の提案は誰でもできますが、コアメンバーかマイナーがアイデアを拒否すると仕組み変更は発動されないため、アメンバーとマイナーの選出が民主的なプロセスに則っているかが、Bitcoinを民主的ということができるかどうかのキーポイントだと言えます。ちなみに最近では Segwit導入が95%以上のマイナーの受け入れを条件に発動されましたが、マイナーの多くがまだ受け入れておらず、発動が延期されている状態です。

cryptocoin.hatenablog.com

 

アメンバーとマイナーの選出プロセス

さて、構成員とプロセスを整理したところで、権力を保持しているコアメンバーとマイナーの特徴を考えていきます。

 

まずコアメンバーについては、これは完全に民主的ではありません。今現在Bitcoinのコアメンバーは、 Bitcoin UnlimitedとBitcoin Coreに別れてしまっていますが、いずれにせよ民主的なプロセスで選出されたメンバーではなく、Bitcoinスタートからの中心メンバーであるにすぎません。

 

一方、マイナーはどうかというと、こちらについては資本力のあるものがその資本に応じて投票権を持つ一種の制限選挙状態になっています。現在では通常のPCではマイニングが全くできず、実質ASICという専用ハードウェアによる採掘が必須であることから、当然Lightweight Nodeの皆さんはマイナーに参加できません。

 

さらに、最近ではマイナーが中央集権化しているという意見もあり、投票権の寡占化が進んでいると言えます。

「ビットコインは中央集権化している」ハーバード大の研究者らが発表 - CoinPortal

 

結論と提言

ということで、我々Lightweight Node集団(=一般大衆)は、専制君主制同様何の権力も持っていない状態です(笑)。専制君主制と唯一異なる点は、一種の目安箱(徳川吉宗で有名なあれ)のような改善要望を出す権利が認められている点ですが、地方自治における解職請求権のような、コア開発者やマイナーの解職請求権は持ちあわせていない状態です。Bitcoinの世界は民主的というよりは、フランス革命前後にブルジョワジー(マイナー)が台頭してきて、王(コアメンバー)と貴族として取り立てられたブルジョワジー(マイナー)が両立している状態に近いといえます。

 

唯一、Lightweight Node集団に残された手段はBitcoinネットワークを見捨てて、現実の通貨や他のコインに乗り移ることです(現実世界における革命)。革命の発生はイコール、Bitcoin世界の終焉を意味するため、コアメンバー、マイナーとしてはなんとか防ぎたいインセンティブが働きます。そのため、そのような変更は行われづらいとは思いますが、開発者・マイナーと一般利用者の思惑が大きく異なる場合にはその問題が顕在化するおそれがあります。

 

より安定的な仕組みにするためには、少なくともFull Nodeには変更にあたって投票権を持たせることが考えられます。Full Nodeはマイナーが採掘したブロックの検証などを行うため、一定程度の計算量を求められますが、マイナーのコスト負担と比べるとたいしてことはないため、誰でも参加することができます。もちろん意識せずに変更後のバージョンにアップデートしていないNodeもいることから、投票にあたっては過去の取引状況などでアクティブ状況が一定程度上回った場合のみ投票権を持つというスキームが考えられます。

 

まとめ

少し批判的な論調でBitcoinを書きましたが、今までのところは開発者は誠意を持ってBitcoin界を引っ張っており、BIPという意見収集の仕組みにより充分なコンセンサスを取ったうえで、Bitcoinプログラムの変更を行っています。ただ、現在のガバナンス体制はコアメンバー内で意思決定が割れた場合や、一部のメンバーが辞職した場合に途端に綻びを見せる体制であるということは認識しておいたほうがいいでしょう。現在も、Bitcoin UnlimitedとBitcoin Core派に分裂しており、将来的にはBitcoinのハードフォークを引き起こす懸念もあります。

 

日本でのBitcoinの第1人者である大石さんは、ヴェンサス・カサーレスの言葉を引用して、「私たちは、私たちによる、私たちのための、私たちが管理する、初めての通貨を手にしたのだ。」と述べています。つまり、政府債務削減のために通貨価値の希薄化やインフレを発生させることが現実世界ではありますが、Bitcoinでは通貨発行量が固定で決まっているため、中央銀行による恣意的な介入を回避できるということをポイントにあげています。

 

そのような意味においては確かに既存通貨に比べると民主的なのかもしれませんが、通貨発行量自体もコア開発者とマイナーによるハードフォークによって変更可能だという点は注記しておく必要があるでしょう。

 

追記 2017年3月4日

実際にETC (Ethereum Classic)では開発者グループによる、発行量調整が行われました。

www.cryptocoinsnews.com

 

将来的にBitcoinを崩壊させるのは、テクノロジーそのものではなく、そのガバナンス体制にあるのかもしれません。