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Bitcoinブロック拡大論争 両陣営の意見

平野さんが「週末の読み物」と題してBitcoinブロック論争のまとめ記事を、Twitterでシェアしていました。いずれの記事も両陣営の意見をよく反映している良記事でしたので、それぞれの意見をここで簡単にまとめておきたいと思います。

対立軸

Bitcoinなどの暗号通貨に一般的に求められるがトレードオフとなる要件として、セキュリティと利便性の2点がよく取り上げられると思います。


このうち、外部からの干渉への耐性などのセキュリティを重視する立場にあるのがコア開発者が主導するSmall Block派です。それに対して、取引手数料の安さ、取引確定の時間など利便性を追求する立場が、Bitcoin Cashに代表されるBig Block派であるといえます。


実際には、裏側にはマイナーやビジネスサイドの権力闘争なども噂されますが、どこまでが真実か定かではないのでここでは触れません。

Small Block派の意見

Small Block派はBitcoinの存在価値はDecentralizeであることだと考えており、政府など外部からの干渉によりBitcoinネットワークが崩壊することを危惧する立場です。彼らがBig Blockに対して反対する根拠は、Big BlockがDecentralizeとはかけ離れた思想であるためです。


そのポイントは2点あり、

  • Miner、Full Nodeの寡占
  • マイニングの匿名性の低下

を警戒しています。


元記事はこちら
bitcoinmagazine.com

Miner、Full Nodeの寡占

ブロックサイズが拡大すると、マイナーがブロックを発見した後で、ブロックをPropage (ネットワーク内に伝播)する時間に遅延が発生します。この遅延が発生することを利用して、ブロックを発見したマイナーは他のマイナーに先駆けてマイニングをスタートすることが可能になります。


このことが何を産むかというと、ハッシュパワーに比例したマイニング機会の平等が崩れ、ハッシュパワーを多く蓄積している大規模マイナーがハッシュパワー比で見て有利になる状況です。このような状況に陥ると、小規模マイナーが次第に大規模マイナー(マイニグプール)に集約されていき、マイニングの寡占化が発生します。


これに加えて、最近ではマイナー間で一種の共謀が行われていることが判明しています。ブロック全体を伝播すると、伝播時間が遅くなりがちですが、共謀したマイナー間でブロック全体ではなく、ブロックへダーのみを事前に伝播しあうことで、共謀したマイナー間では他のマイナーよりも有利にマイニングを行うことが可能になります。


ハッシュパワー比でのマイニング機会の平等が崩れているのに加えて、マイナー間共謀でさらに平等性が崩れるイメージf:id:steinith310:20171021152950p:plain

マイナーの寡占は次の項で説明するマイナーの匿名性の低下と相まって、政府など外部からの規制に対する脆弱性が上昇する結果につながります。


さらに、ブロックサイズが拡大すると、フルノードを運営する人々も負担が増えることにつながります。結果として、フルノード数が減少すると、マイナーが作成したブロックを検証するのに、少数のフルノードをトラストすることが必要になり、こちらについても外部規制への脆弱性が上昇することにつながってしまいます。

マイナーの匿名性の低下

マイナーの寡占化の項で見た通り、Big BlockはPropagation時間に影響を与えます。


マイニングを実施する際に匿名性を維持しようと考えるとTorなどの匿名化ソフトを利用することが考えられますが、Torを利用するとPropagationされたブロックを収集するのにも時間がかかってしまいます。Big Blockを利用するとこの時間は当然増大します。


結果として、匿名化マイナーの維持が困難になると、これまた外部からの規制に対する脆弱性が上昇することにつながります。

Big Block派の意見

これに対してBig Block派はBitcoinの存在価値を、外部からの干渉への耐性ではなく、取引手数料の安さ、取引確定の時間など利便性に置いており、思想が全く異なるものだといえます。


元記事はこちら
www.bitcoin.com



2016年頃までのBitcoinは現在とは異なり送金手数料がほとんどかからず、なおかつトランザクションは通常1ブロック以内にブロックに取り込まれて、取引が確定されていました。しかし、Bitcoin利用者が増加することに伴いスケーリング問題が発生し、Bitcoinの送金を素早く行いたいと考えると、現在では高額の手数料を支払う必要があります。


Bitcoin Cashは2016年頃までのBitcoinのお手軽さ、便利さを取り戻そうという思想です。上記元記事に、わかりやすい比較画像があったので、引用します。


f:id:steinith310:20171021161119p:plain


Small Block派の反論

利便性が低下することに対して、Small Block派もただ黙っているわけではありません。彼らのアイデアは、Bitcoin送金ネットワーク自体は、Small Blockでセキュリティを保証する。それに加えて、別レイヤーで簡便な送金手段を提供するというものです。


別レイヤーというと、最近ではSegWit導入で現実味を帯びてきたLightning Networkもありますが、ビットコインをチャージできるデビットカードなどもここに含まれます。つまり、基本的にはオンチェーンで取引を完結させることでセキュリティを確保する一方、少額決済に利用したい場合はLightning Networkを利用したオフチェーンを利用したり、トラストレスが求められない局面ではデビットカードを利用してFiatに変えることで利便性を担保しようというアイデアです。


Lightningのネットワークの要素技術であるマイクロペイメントチャネルの紹介
cryptocoin.hatenablog.com


まとめ

Big Block派の権化みたいなシンガポール観光記事を書いておいてなんですが、個人的にはBitcoinの価値は、外部からの干渉を受けない堅牢性にあると思っているので、Small Block派です。早く、安く送金したいなら、銀行、PaypalやLINE Payなどを使えばいいんじゃないかな、と。
cryptocoin.hatenablog.com

いずれにしても、11月にSegWit 2XへのフォークをBitcoinは控えており、Bitcoin、Bitcoin Cash、Bitcoin 2Xがどのような変遷をたどっていくかは気になるところです。11月以降も、少し油断すると浦島太郎状態になる状況は続きそうですね。