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ジャカルタ初のスマート店舗 JD.ID X

先週末、ジャカルタのPIK Avenueに登場したJD.ID Xという、スマート店舗に行ってきました。詳しくはYouTube動画を見ることをオススメしますが、顔認識技術とRFID技術を利用することで、無人店舗を実現するためのコンセプトショップです。


Introducing JD.ID X-Mart

JD.IDとは

中国でのオンラインショップといえばAlibabaが有名ですが、「京東商城(JD.com)」は中国EC業界第2位としてAlibabaを追いかけています。Alibabaはどちらかというと日用品や小物などがなんでも揃うという品揃えを強みとしていますが、JD.comは工場で組み立てたものを自社倉庫にすぐに移動するルートを確保したり、午前中の注文は当日中に配達するなど、自社保有の物流面で勝負をしています。


一方、東南アジア、特にインドネシアではJD.comはAlibabaに遅れを取っている印象です。JD.comは2015年にインドネシアにJD.IDとして進出しましたが、2017年のデロイトのeコマースプラットフォーム調査では名前も登場していない状態です。


2018年時点で訪問者数ベースでJD.IDはインドネシア第4位ですが、Alibabaが買収したLazadaとは約3倍の差があります。ただ、インドネシア国内でも中国国内同様配送網を自前で用意するなど、足場固めを進めてきました。

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デロイト消費者調査
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/consumer-business/cp/jp-cp-ci2017idn.pdf

店舗の雰囲気

今回のJD.ID Xは中国国内で30店舗以上運営している店舗ノウハウをつぎ込んだものですが、今回の店舗は実用的な店舗というよりは、あくまでも実験店舗という位置付けのようでした。その証拠に、店舗スタッフも7人ほど働いており、無人店舗と言える状態ではありません。


とはいえ、このようないわゆるスマート店舗のジャカルタへの進出は今回が初の店舗であり、実際に現地に行ってみると新しいものが好きそうな華僑系の若者から中年層の人がひっきりなしに訪問していました。みなさん特に買いたいものがあるわけではなかったので、腐る心配のない洗剤がやけに売れていました笑
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商品購入の流れ

さて、流れとしては、以下の通りです。なお、事前にインドネシアで発行されたクレジットカードをJD.IDアプリに登録する必要があります。私は残念ながらインドネシアのクレジットカードを持っていなかったので、外から見学です。

  1. (入店) クレジットカードと連携したJD.IDアプリで表示したQRコードを、入り口のゲートで読み込み
  2. (店内) RFIDタグがついた商品を自由に手に取りカゴへ
  3. (退店) 一人ずつ顔認証ルームにて顔認証 (+ RFIDタグの読み取り)を行い、顔認識されればゲートが空き退店
中国での従来型店舗との差異

こちらの記事をみると、中国国内ではRFIDタグではなく、カメラ及び商品棚のセンサーで在庫状況を管理しているようですが、今回の店舗ではRFIDタグが健在でした。


RFIDタグの場合は一度に大量の入店があった場合でも、商品情報を識別できる点に利点がありますが、今回の店舗の場合店舗面積が非常に小さいため、カメラで認識に問題が出ることは考えづらいと思われます。
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どちらかというと、今回RFIDを利用しているのは、取り扱い商品の差が要因かと思われます。今回の店舗は服などのアパレル商品も取り扱っています。アパレル商品の場合は、陳列されている商品を試着したり、試着した商品を同じ位置に戻さないなど、ジュースや菓子類などと違う商品特性を持っています。このような商品を取扱うためには、最後に一括して商品情報を読み取れるRFIDタグが最適です。


経済産業省や日本の各企業は、現在1枚10円程度するRFIDタグを、2025年に1円以下にする目標を立てています。こうしたRFIDタグの価格下落の見通しも、今回のRFIDタグを利用した実験を後押ししていると言えます。
第386号 物流・流通を変革する武器RFID(自動認識システム)を考える。(前編)(2018年4月24日発行) | ロジスティクス・サービス・プロバイダ/サカタグループ(Since 1914)

今後の展望

インドネシアではオンラインショッピングの経験者が2016年から2017年にかけて25%近く上昇して(上記デロイトの調査レポートより)おり、今後も中間層が成長することが見込まれることから東南アジア一の市場と目されています。


JD.comはインドネシアにおいても中国での戦略同様、物流網の強化による配送スピードの改善に取り組んでおり、85%の注文を同日または翌日中に配送することを目標としています。一般にEC企業の物流というと、BukalapakがGo-JEKと提携、TokopediaもGo SendやGrabexpressを利用するなど、都市部の配送にバイクタクシーを活用することで倉庫から顧客への物流効率をあげることが注目されますが、Lazadaが東南アジアに巨大倉庫を次々に建設するなどEC企業にとって倉庫は切っても切れない存在です。


その中でもJD.comは中国では完全無人の物流施設を運営するなど倉庫運営業務には定評があり、得意の倉庫を中心とした物流網をインドネシアに構築することで、配送時間の短さを実現、訴求していきたいところです。その上でリアル店舗を通したインドネシアの顧客情報収集を行うことで、中国で進めているオンラインとオフラインの融合をインドネシアでも進めていきたい考えです。