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Ethereumプロジェクト紹介 第2回 EncryptoTel

前回の「Ethereum プロジェクト紹介」では、Melonportを取り上げました。今回は、ICO情報サイトのcoinscheduleの情報を元に、直近のEtheruem ICOに関わるプロジェクトを見ていきたいと思います。まずは、EncryptoTelを取り上げます。

Coinschedule - The best cryptocurrency ICO list. Only selected ICO crowdfunding projects


掲載予定
EncryptoTel (今回)
MobileGO
Veritaseum
Back To Earth
Populous
FundRequest

(*) ここに掲載しているプロジェクトは、これから調査予定で、現時点では詳細を調べていません。ここに掲載する情報は投資をオススメするものではなく、ただの調査リストとお考えください。


前回の記事
cryptocoin.hatenablog.com

EncryptoTel

公式サイト
Encrypto Telecom
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Whitepaper
http://ico.encryptotel.com/assets/pdf/EncryptoTel_WP_v1.pdf


このプロジェクトでは、SkypeやLine通話のようなWeb通話を暗号化することで、個人間、企業間の通話を盗聴から防ごうというプロジェクトです。公式サイトでは個人間の通話に関しても情報が掲載されていますが、メインとなるターゲットは企業で使用されているPBX(後ほど記載)を、EncryptoTelでリプレースすることのようです。


具体的な使用方法ですが、ZoiperなどのIP電話の統合管理ソフトと接続して利用する形になるようです。設定方法はこちらのPDFにまとまっています。
https://encryptotel.com/files/OtherMobile.pdf


PBX
PBXとはPrivate Branch Exchange (構内交換機) の略で、企業内で電話交換をするための装置になります。いわゆる、「内線」を実現するための機械、仕組みです。最近では複数拠点間でIP通信を実現し、電話代を抑えることが可能なクラウド型PBXも登場しています。EncryptoTelはこのクラウドPBXの一種としてカテゴライズできるかと思います。


基礎から始めるIP-PBX[第1回 IP-PBXのイメージを掴もう] | Call Center Trends


クラウド全般にいえることですが、企業がクラウドを導入しようというときに最も懸念する点が「セキュリティ」です。複数社で機能を共有することで規模の経済が働くため、一般的にクラウドのほうがコスト面で優れていますが、外部ネットワークに接続する必要があることから、盗聴の危険性は少なからず上昇します。これに対して、例えばクラウドベンダーのAWSなどではVPNだけではなく、専用線の引き込みを認めるなどしてセキュリティに対する懸念払拭に取り組んでいます。

仕組み

さて、肝心のEncryptoTelのWhitepaperを読んでみます。しかし、残念ながら、Whitepaperを読んでも思想やら、提供予定の機能紹介ばかりで、技術的な仕組みが全く書かれていません(笑)。推測100%ですが、以下のような感じかと考えています。


ユーザ登録機能:ブロックチェーンを利用
PBX機能:ブロックチェーンを利用+PBX用のスーパーノードを構築 (?)
通話履歴管理+課金機能:ブロックチェーンを利用
通話機能:通常のP2P通信を利用


例えばSkypeでは、ユーザ登録情報を中央のサーバで一元管理しています。その部分は確かに中央集権的な仕組みを利用せずとも、ブロックチェーンを利用することができるのでサーバ構築・運用費用分のコスト削減は可能かと思います。


また、ブロックチェーンとは一切関係がありませんが、Bitcoin / Litecoinでの利用料支払いを認めることで (他にはUSD, EURで支払いが可能)、通話通信だけでなく、支払いに関しても匿名性を担保しようとしています。

開発方針

現在β版としてEncryptoTelがサーバを保有する形でのクラウド型システムを提供しているようです。ICOにより開発資金を集め、現在のクライアントサーバ型のシステムから、ブロックチェーンを利用したシステムに変更を図っているようです。

トークンの用途

トークンはPBXやIP通話の利用料の支払いに利用されるようです。BitcoinやLitecoinでの支払いも同様に認めるようですが、ETT (EncryptoTel Token)を利用した場合は、ディスカウントすることでETT保有意欲を高める政策です。それに加えて、ETTを保有することで、EncryptoTelの意思決定への参加や、経営状況を確認するサイトへのアクセスができるようになる予定です。
The EncryptoTel Token (ETT): fuel for our telecommunications ecosystem



また、トークンの管理方法は少し特殊な方法を採用しており、EtheruemとWavesの2環境でシームレスにトークンを保持する仕組みになっています。この仕組みの実現には、Blockswapが利用されています。ちなみにBlockswapは次号でお届けする予定の、「MobileGo」でも使用されており、ICOの際のスタンダードになりつつあるのかもしれません。
What is BlockSwap and why will MobileGo use it? — Steemit


問題点

PBXの仕組みをどのようにブロックチェーン上で実現するつもりなのかの詳細がありません。PBXを実現するためには、当然ですがPBX内のネットワークと外部の電話網を接続する必要があります。当然ブロックチェーン上でPBXを実現しようとする場合も同様で、ブロックチェーンを保持する各ノードから既存電話網に接続されている必要があります。


通話だけを行うノードもブロックチェーン上に存在すると仮定すると、一種のスーパーノードとしてPBXノードを定義する必要があります。仮にこのPBXノードをEncryptoTelが維持する構成だとすると、結局既存のクラウド型PBXとやっていることは同じになりますので、ブロックチェーンを利用する必要がまったくありません。


唯一新規性があるとすれば、ペイメントまで含めた匿名化ですが、これに至ってはPBX用のブロックチェーンとは一切関係ないため、例えば既存のPBX業者がBitcoin支払いを認めたらそれだけで新規性は失われてしまいます。


肝心の通信暗号化にしても、Skypeなどでも既に採用されているTLSを利用しているだけで新規性は全くなく、ブロックチェーンを利用する必要性も特にありません(おそらく通信はSkypeなどと全く同様のP2P通信でしょう)。

結論

開発資金を集めるためだけのICOのように思えます。既存のクラウドPBXで十分でしょう。




あとがき
EncryptoTelはともかく、ICOプロジェクトを調べると、既存ビジネスや技術の勉強 (今回だと、PBX)ができていいですね(笑)